マスクを手放せない日々が続くが、肌が弱い人はこれが何ともつらい。肌のトラブルの相談で皮膚科を訪れる患者が増えているという。
東京都在住の40代男性は、6月頭から通常通りの勤務に戻り、肌荒れが一層ひどくなった。
社内でマスク着用が義務付けられているので、通勤時間も合わせると、1日10時間以上マスクを着けていることになる。マスクで覆われた部分にじっとり汗をかき、かぶれが悪化。かゆくて仕事に集中できない。マスクが肌に触れる部分には吹き出物もできている。
■マスクの大きさを変えてみる
「新型コロナウイルスの影響で増えたと思われる皮膚疾患に、マスクによる皮膚トラブルがあります。皮膚炎やニキビなどの訴えが多いです」
こう話すのは、東京慈恵会医大付属病院皮膚科の梅澤慶紀診療医長。対策の一つとして挙げるのが「顔に合ったマスクを使用する」ということだ。
「マスク装着時にチクチクするような違和感がある場合は部分的な刺激が皮膚に加わっていることを意味します。マスクの大きさを変えるなどして工夫する必要があります」(梅澤診療医長=以下同)
ヒモを緩めて、マスクが肌を極力こすらないようにする。化学繊維である不織布のマスクではなく、肌に優しい自然素材のコットンで作った布マスクを選ぶのもいい。布マスクは通気性がよく、蒸れにくいのも利点だ。 不織布マスクを日常的に使う場合は、不織布マスクと同じくらいの大きさのガーゼを挟み、不織布の繊維が肌に直接触れないようにする。ガーゼによって蒸れも防げる。蒸れると、皮膚の角層の部分が柔らかくなり、皮膚が刺激に弱くなって、かぶれなどの原因になる。ガーゼを何枚か用意し、頻繁に取り換えると、より蒸れにくくなる。
■ガーゼを上手に活用する
以前と比べるとマスクが手に入りやすくなったとはいえ、「もう少し値段が落ち着いてから」「これから先の備えのために」などと、マスクの使い回しを続けている人も少なくないだろう。しかしそれは、雑菌の繁殖を招く。マスクは定期的に取り換える方が皮膚トラブル対策にはいい。
「女性の場合は、ファンデーションなどのお化粧で毛穴が詰まってしまうのも問題。お化粧をしないことが皮膚トラブル対策のためにはいいのですが、それはちょっとという方には、洗顔の工夫を提案しています」
具体的には、お風呂にしっかり漬かり、十分に温まって皮膚の脂が柔らかくなったタイミングで、洗顔自体よりすすぎを十分に行う。
「毛穴に詰まった脂と汚れ(ファンデーションなど)を落とすので、洗顔で皮膚表面を洗うより、よくすすいで毛穴の脂を溶かし流すイメージです」
洗顔後は、化粧水で保水するのはもちろん、乳液やクリームで保湿もしっかり行う。夏は保湿を「軽め」にしがちだが、前述の通り、マスクによって肌荒れが起こりやすいので、例年以上に保湿も大事になる。これは、男性にも当てはまる。化粧水や乳液、クリームをつけていない男性は、妻のものを借りるか、薬局やドラッグストアに買いに走るかだ。
「マスク選びや洗顔などの工夫をしても皮膚トラブルが改善しなければ、皮膚科を受診してください。しばらくマスクをしない生活は難しいと思うので、軽いステロイド系塗り薬など何らかの薬をうまく活用して症状を改善していくしかないでしょう」
いっそのこと、マスクではなくフェースシールドにするか……。
アルコール消毒による手荒れも増えている。
■手荒れ対策
「せっけんを使った一般的な手洗いでウイルスは、ほぼ洗い流せます。アルコールによる洗浄を避けて、ハンドクリームを頻用すれば、手荒れ予防が可能になります」(梅澤診療医長)