医師の診断を得ていない「隠れ貧血」(主に鉄欠乏性貧血)の人口は、日本人女性の1割を占めるというデータ(国民栄養調査)があります。
貧血は一般的にみられるのに対し、比較的まれな病気が多血症です。いったい、どのような病気なのでしょうか。
先に「多血」について説明しましょう。
赤血球数の目安になる「ヘモグロビン」(赤血球内にあるタンパク質の一種。全身の細胞に酸素を送る働き)の値が、男性では赤血球ヘモグロビンが1デシリットル当たりおおむね18g/デシリットル。女性はわずかに少なく、16g/デシリットル以上の状態を「多血」といいます。
診断時の平均年齢は60歳ぐらいで、20歳未満の若い人に発症することはまれです。
多血症の症状ですが、俗にいう“血の気が多い”とか、頭が切れやすくなるという症状でありません。
代表的な症状は、めまいや頭痛、倦怠感などです。また、血が固まりやすくなるので、心筋梗塞、脳卒中やエコノミークラス症候群といった怖い病気の要因にもなりかねません。
多血症といっても、赤血球は増えていないにもかかわらず、脱水などで血液中の水分が減ることによって血液が濃くなるという相対的多血症も夏にはよく見られます。
しかし、本物の多血症として、「JAK2」と呼ばれる遺伝子の突然変異で骨髄中の造血細胞の異常により赤血球が過剰産生される「真性多血症」があり、白血球や血小板も増えることがあります。成人10万人に約2人が発症するごくまれな病気です。
一方、最も多いのはエリスロポエチンという造血ホルモンが増産されて赤血球が増加する「二次性多血症」です。
低酸素を生じさせる高地生活、喫煙や肥満、それに慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群などが多血症を引き起こすことがあり、腎臓や肝臓のがんなども多血症の原因となり得ます。
最近、生活習慣病やメタボリック症候群でも、赤血球数、Hb、赤血球分布幅などが増加することが分かってきました。
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