実家に帰省したい…新型コロナの「抗体検査」は有効なのか

注射で行い、結果は15分で出る
注射で行い、結果は15分で出る

 新型コロナの抗体検査を行うクリニックが増えている。受けるべきか?

 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の検査には、保険適用のPCR検査・抗原検査、保険非適用の抗体検査がある。症状がなくてもすぐ受けられるのが、抗体検査だ。

 しかし目的を間違えれば、結果次第ではかえって混乱を招く。

「『実家に帰省したいので』と抗体検査の相談に来る方が多いのですが、抗体検査では、現在ウイルスが体内にいるかどうかは分かりません。ウイルスを実家に持ち込む可能性があるかどうかは判断できません」

■目的は「過去に感染したかどうか」

 こう話すのは、「九段下駅前ココクリニック」(東京・千代田区)の石井聡院長だ。ウイルスの有無を調べるPCR検査・抗原検査に対し、抗体検査はその名の通り、抗体を調べるもの。

「抗体は、ウイルスに感染し、それに反応してつくられます。つくられるまでに1~2週間かかるのです。その時にコロナらしき症状がなければ、抗体検査で陽性になっても、すでに治っている。抗体検査は事後の体の反応を見ているので、『抗体検査で陽性=現在ウイルスに感染している』とはならないのです」(石井院長=以下同)

 抗体検査は「陰性かどうか(過去にコロナにかかったことがあるか)」を知る目的で受けるのがいい、と石井院長が言う。たとえば「①症状は全くないが、今までのコロナ対策でよかったのか知りたい」「②1~2カ月前に風邪っぽかった。コロナだったのか知りたい」「③軽い咳や微熱が3週間ほど続いており、コロナかと不安」という場合だ。

「③の症状は恐らくコロナではないですが、抗体検査で陰性となれば安心できます。逆に『咳がひどく5日間高熱が続く』という場合、コロナも疑われます。抗体検査ではなく、PCR検査や抗原検査を検討するべき」

■市場に出回るものの質は玉石混交

 石井院長はクリニックで6月8日から抗体検査を実施。それまで複数の検査キットの導入を検討したが、すべて不採用としていた。信頼に足るものがなかったからだ。もし抗体検査を受けるなら、チェックした方がいい点が3つある。

 まずは、言うまでもなく信頼度の高さ。現在、抗体検査薬は国産もあるものの、研究用試薬にとどまっている。

 海外からの輸入に頼らざるを得ず、市場に出回っているものの質は玉石混交だ。

「当院では米国FDA(食品医薬品局)の緊急使用認可を最初に取得し、FDAが検査成績を公表している検査キットを使っています。監査制度が確保されているので、精度や安全性がある程度、担保されています」

 緊急使用認可とは、緊急事態下にFDAが医療現場での使用許可を出す制度。検査キットによっては「申請中(=認可に至っていない)」だったり、一度認可されたが後ほど取り消されたりしたものもある。医師に説明を求めるべき。うまく答えられないなら、医師も十分に理解していないケースも考えられる。

 次に、陽性になった時の対処についてしっかり説明をしてくれる医療機関かどうか。抗体検査は、陽性でないのに陽性と出る偽陽性の率がPCR検査などよりも高い。石井院長は、陽性となった場合、より精度の高い抗体検査を行う検査受託会社に無償で検査委託をするようにしている。

 さらに、指先から採った血液で行う検査か、あるいは静脈から採血して行う検査なのか。石井院長は後者でやっている。その方が、より正確な結果が出るという考えからだ。

 記者も、石井院長のもとで抗体検査を受けてみた。

 注射後、15分で陰性という結果。「今までの予防策でよかったんだな」と思った。費用は5500円だった。

関連記事