蛭子能収さん発症がTV番組で明らかに「レビー小体型認知症病」とは?

蛭子能収さん
蛭子能収さん(C)日刊ゲンダイ

 漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)が、初期の認知症を患っていることが、9日放送の医療バラエティー番組「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)での検査で明らかになった。

 ひょうひょうとしたキャラクターからテレビのバラエティー番組に引っ張りだこの蛭子さんだが、最近物忘れがひどく、携帯電話から電話をかけているのに「携帯電話がないよ」と言ってきたり、あり得ないものが見える幻視を訴えたり、簡単な計算ができないことが増えてきたという。心配した蛭子の妻とマネジャーが番組に相談し、認知症治療の専門病院で検査を実施。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症が合併して発症していることが判明した。

 番組内の蛭子さんは、すでに認知症が始まっているということにショックを隠せない様子だったが、現在レビー小体に良く効く薬があり、認知症が悪化しやすい早朝、泊りの仕事を避けてなるべく日中仕事に励む方が良いとの医師の話に「できるだけ仕事は続けたい」と元気を取り戻していた。

 改めてレビー小体型認知症とはどんな病気なのかを、「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

■4つの特徴とは?

「認知症の原因はハッキリとはわかっていません。しかし、特定のタンパク質の脳内の蓄積が関係していることが影響していることがわかっています。蓄積するタンパク質の種類は認知症の種類によって異なり、認知症の5割を占めるアルツハイマー病(AD)ではアミロイドβ(Aβ)やタウが増えていく。レビー小体型の場合は、αシヌクレインと呼ばれるタンパク質が増加し、それがレビー小体というものを形成。脳の神経細胞を徐々に減らしていくことで認知症の症状が出ると言われています」

 レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、血管性認知症と併せて3大認知症といわれる。アルツハイマー型認知症と併発するケースも少なくない。

「レビー小体型認知症には主に4つの特徴があることが知られています。『認知機能の変動』『幻視や幻聴』、『パーキンソン病症状』、それに『レム期睡眠行動異常』です。認知機能の変動とは、認知機能がしっかりしている時と悪い時の差がハッキリしていて、その変動が1日の間だったり、1週間、1カ月の間だったりすることを言います。家族の顔がわからなくなったり、言葉が出てこなかったりするかと思えば、普段通りの振る舞いを見せることもある。そのため周囲から『認知症ではない』と見過ごされるケースも少なくありません」

 幻視や幻聴は初期段階から生じることが多いという。例えば、「(死んだ)人が話しかけてくる」「天井に虫が這っている」など、そこには存在しないものが見えたり聞こえたりする。そのため突然大声を出したり、虫を殺そうとしたりする。

 レビー小体は運動機能に影響を与えるため、体や表情が硬くなったり、手足の震えや運動がぎこちなくなったり、転倒を繰り返す、といったパーキンソン病症状が出てくる。体を動かす交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないために自律神経症状があらわれて、大量の寝汗や便秘や立ちくらみ、動悸がする。さらには抑うつ状態になり、何事にも興味を失い「生きるのがつらい」などと言い出すこともある。また、「本物の家族じゃない」「自分の家ではない」といった妄想があらわれることもあるという。

 夢を見ているときに夢の中と同じように行動することも特徴のひとつだ。人が夢を見るのはレム睡眠と呼ばれる段階のときが多い。レム睡眠とは睡眠全体の20%くらいを占める睡眠でノンレム睡眠と交互に現れ、明け方にその時間が長くなる。睡眠中、健康な人は筋肉の活動をブロックするメカニズムが働いているため、夢を見ても行動することはない。ところがレビー小体型認知症の人はその機能が障害されているため、睡眠中に体を動かすという。

「寝言を言って怒鳴り、手を振り回して隣で寝ていた奥さんを叩いたり、起き上がって殴ったり、壁にぶつかり階段から落ちたりした例も報告されています」(林院長)

 レビー小体型認知症は他の認知症に比べて進行が早いといわれる。心当たりのある人はすぐに病院に相談することだ。

関連記事