ウィズコロナ時代の紫外線対策は? 大学教授が解説

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 ウィズコロナ時代、今夏の紫外線対策はどうしたらいいのか。リモートワークで自宅にこもりがちになると、屋外で紫外線を受ける機会が少なくなる。その結果、ビタミンDの皮膚での生成量が減少し、骨がもろくなる恐れがあるという説は本当だろうか。皮膚への紫外線研究で知られる日本医科大学皮膚科の船坂陽子教授に聞いた。

「紫外線の浴びすぎは百害あって一利なしです。ビタミンDを意識しても、紫外線はなるべく浴びない方がいいでしょう」

 紫外線を直接、慢性的に浴びると「光老化」(肌の老化)という症状が進む。これが女性に大敵のシミ、シワの大きな原因になるという。

 UVカットという言葉でおなじみのUVは「Ultra Violet」(紫外線)の略。日焼けの要因となるのはUV-B(中波長紫外線)とUV-A(長波長紫外線)とされる。

 UV-Bは赤くなる急性の日焼けである「サンバーン」と、後に皮膚を茶色や黒に変化させる「サンタン」を引き起こす。

「サンタンは数日後から生じ数週〜数カ月続くこともあります。日焼けからシミになったのであれば、皮膚科での治療が必要になります」(船坂教授)

 紫外線の弊害はそれにとどまらない。それは皮膚がんだ。

「皮膚がんは最も懸念すべき光老化の症状です。皮膚がんは世界的に増加傾向にあり、とくに悪性黒色腫(メラノーマ)の増加が問題となっています。紫外線が遺伝子を傷つけ、それが皮膚がんの原因の一つになっていると考えられています」

 皮膚がんの発症リスクは自然界の紫外線だけではない。UV-Aを発する日焼け用機器もメラノーマのリスクを助長するとされ、世界保健機関(WHO)では、18歳未満は同機器を使用すべきではないとの勧告を出している。

■日焼けクリームの表示を正しく読む

 では、紫外線を防ぐにはどうしたいいのか。帽子や日傘などによるプロテクト方法があるが、船坂教授は「それだけでは不十分。帽子をかぶっていても地面の反射から紫外線を受けることがあります。効果が期待できるのは日焼け止めクリームです」と言う。

 日焼け止めクリームの商品を見ると、「SPF」という用語が記されている。これは「Sun Protection Factor」の頭文字で、「防御能」という意味だ。SPFはUV-Bに対する効果の指標を表している。PAという用語も記載されており、これは「Protection Grade of UV-A」の略で、UV-Aに対する効果の指標だ。

 SPFの数字は、UV-Bの照射を受けると紅斑反応が生じるが、クリームを塗ることでそれがどのくらい抑制されるかとの指数だ。PAの「+」の数は、UV-Aの照射によってもたらされる「皮膚黒化」(皮膚の酸化)がどれだけ抑制できるかを示す。

 SPFもPAも数値が多いほど防御力が高いことを示す。クリームを選ぶ目安については「日常生活ではSPFが『20』程度でよいが、炎天下に出掛ける際にはSPF『50』か『50+』のものを使用するのが望ましい」

 とはいえ、紫外線は悪い面ばかりではない。紫外線はカルシウムや骨の代謝に欠かせない栄養素であるビタミンDを生成するという作用がある。ビタミンDが欠乏すると、小児なら「くる病」に、成人なら骨粗鬆(こつそしょう)症と骨の弱体化につながる疾患になるリスクがある。

 船坂教授も紫外線のこうした作用は重要と指摘する。「ごく普通の生活をしている人なら、通勤や買い物で無意識に紫外線を浴びています。夏であれば、正午前後、数分の日光を浴びれば必要なビタミンDが皮膚で合成されます」として、あえて長時間、浴びる必要はないと説く。

 ビタミンDは食事で取ることも可能だ。ビタミンDを多く含む食品として魚ではマグロやサケ、サンマなどが挙げられている。

 骨を強くするためビタミンDを増やしたいからといって、紫外線を過剰に浴びる必要はない。むしろ避けるべきだ。在宅勤務でこもりがちな人で「ビタミンD不足による骨の劣化が心配」という人は、たまに散歩しつつ食事によるビタミンD摂取を意識するといいだろう。

(取材・文=中野諭/医療ジャーナリスト)

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