加齢や衰弱により細くなった血管は、点滴の針が入りにくい。薬が漏れない良好な血管が見つかるまで、何回も針を抜き差しすることもある。時には首の太い血管から点滴の針を入れることもあるという。
「喀痰吸引だって、鼻や口、ときには切開した気管から細い管を入れて、痰や唾液など分泌物を吸い出すため、苦しい思いをします」
気管切開や人工呼吸器を使うことになれば自力で喀痰しにくいため、吸引回数も当然増えていくそうだ。
もしも患者が認知症ならば、治療への理解も難しい。それで体を拘束されれば、高齢者の場合、筋力はあっという間に落ちていく。
「治らない人に治す治療が続けられたり、緩和できるはずの苦しみが放置されたりするという現状もあります。治療によってQOL(生活の質)が低下し、治るという希望を持たされながら、治療という喧騒の中で一生を終えてしまうことも珍しくありません」
在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」