幸い救命できたとしても、積極的な治療をきっかけに何年も寝たきりになり、元の生活に戻れず亡くなることもあるという。
「どのような状態になっても命を永らえたいと考えるのならば、積極的な治療をしてくれる病院を選択した方がいいでしょう。ただし“その人らしさや生き甲斐”を失わずに医療やケアを受けるのは難しい。一方で在宅医療は、その人の生活や価値観を大切にする医療です。その人の尊厳を保ちながら、望むような医療の形でサポートすることができます。病院でもあまり使われない高容量のモルヒネを使うことも可能ですし、胸水排液や腹水排液だってできます。医療は、その人の生活の質を高めるための“黒衣”です。人生を支配するものではありません」
蘆野さんが今までに在宅医療で看取った患者は500人を超える。どの患者も病院より穏やかな最期を迎えているという。
(取材・文=稲川美穂子)
在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」