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「歯磨き」が新型コロナ予防になるのは本当なのか?

歯科医師の柴原孝彦氏
歯科医師の柴原孝彦氏(提供写真)

 2002年に流行したSARS、12年のMERSはすべて「コロナウイルス」です。この時のデータから、分かっていることがあります。歯周病菌とコロナウイルスの関係です。

 人の口腔内には歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリスなど)があって、肺炎や心内膜炎、大腸がんの原因になるといわれています。

 咽頭にはコロナウイルスが侵入できる標的細胞が存在します。この細胞集団は糖タンパクによって守られていて、ウイルスが容易に侵入できないようにしています。歯周病原菌などから産生されるプロテアーゼはこの糖タンパクを破壊することもあり、ウイルスの侵入を助けていることが分かりました。

 もっとも、「新型コロナウイルス」についてはまだデータはないのですが、これまでのコロナウイルスと同じように考えています。だから、歯周病患者や口腔内が汚れている人は、予防しなければなりません。

 コロナウイルスは唾液にも含まれるので、「歯磨き」「舌ブラシによる掃除」「うがい」のセットが効果的です。うがいは喉の奥までしっかり行き渡るようにしたいですね。

 うがい薬では、「リステリン」のアルコールが有効とされていますし、「イソジン」や「ネオステリン」も効果が期待できます。

 歯磨きは毎食後3分、寝る前に3分、1日4回はしてほしい。うがいは歯磨きの前にするのが理想です。

 また3月に、米紙ニューヨーク・タイムズが歯科医院を感染リスクが高い危険な場所として取り上げました。そのため、世界中で歯の治療を躊躇する動きがありましたが、実際は逆です。

「必要不急」の場所ですから、虫歯に限らず、歯石を除去するスケーリングやメンテナンスもやった方がいい。口腔内を清潔に保って、予防しましょう。

▽柴原孝彦(しばはら・たかひこ)1979年東京歯科大学卒業。93年ドイツ・ハノーバー医科大学に留学(客員講師)、2012年からは東京歯科大学口腔がんセンター長を務める。さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors -名医のいる相談室-」では、「口腔ケアによるコロナ予防」をテーマに解説します。

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