蛭子能収さん軽度の認知症…これまで通りの活動できるか

漫画家でタレントの蛭子能収さん
漫画家でタレントの蛭子能収さん(C)日刊ゲンダイ

 漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)が「軽度の認知症」と報じられた件。蛭子さんは9日放送のテレビ東京系「主治医が見つかる診療所2時間スペシャル」に出演。認知症治療の専門病院を受診した。 

 それまでも物忘れがひどかったそうだが、病院での検査では簡単な計算ができず、検査に付き添った妻の「洗濯カゴの中の衣類を見て私が倒れていると思って叫んだりする」という発言などから物忘れや幻視などの症状があることが判明。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症と診断された。

 蛭子さんは「(仕事を)できなくなったらしょうがないけど、できる間はずっと続けていきたい」とコメント。ネット上では「ボケるにはまだ早い年齢」「もうテレビで見ることもなくなっちゃうのか」「きつい。幻覚・幻視の影響で暴力的になるタイプのアルツハイマーだから」というショックの声が上がった。

 しかし実際はどうなのか? 米山医院(東京・あきる野市)の米山公啓院長によれば、「アルツハイマー型認知症でもレビー小体型認知症でも、早期のうちは薬で症状が抑えられます。また、周囲の多少の助けは必要とはいえ、ある程度進行しても、自立した生活は可能。仕事内容によってはそのまま継続も問題ない」。

 記者は以前、レビー小体型認知症の女性(50代=取材当時・以下同)を取材したことがある。この女性は若年性のレビー小体型認知症と診断されて2年、主治医によると発症は11年ほど前、40代のときとのことだったが、インタビューをしている間、認知症のように見える言動は全くなかった。つまり、記憶力、理解力、思考力において、私たちがイメージする「認知症っぽさ」は皆無だった。

 女性自身、「(適切な治療で)幻視、注意力低下、意識障害など自律神経障害以外の症状は、ほとんど改善しています。認知機能テストも満点に回復しています」「認知症は右肩下がりに悪化する一方と医師は言いますが、違います。慎重で適切な治療が大前提ですが、不安などのストレスで悪化し、人と楽しく笑い合うことが一番症状を改善することを実感しています」と話していた。レビー小体型認知症の正しい知識を伝えるための講演会にも出演し、そこで用いるスライドは自分一人で作成していた。

 さらに記者は、レビー小体型認知症の症状である「幻視」をVRで擬似体験したこともある。視線を動かすたびに「みんなが見えていないもの」が現れ、ずっと不安で落ち着かず、恐怖も覚えた。レビー小体型認知症の人が突然叫んだり怯えた様子を見せた時に、幻視という症状を周囲が理解できていれば、コトを大きくせず、適切な対応ができるのではないか。

「認知症というと特殊な病気という印象があり、本人だけでなく家族もショックを受けることが今でも多い。しかし病気のことを本人と周囲がしっかり理解すれば、これまで通りの生活を送りながら病気とうまく付き合っていくことができるのです」(前出の米山院長)

 蛭子さんの今後の活躍を楽しみにしたい。

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