「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の鼻症状を放置していると、中耳炎や副鼻腔炎になりやすくなる。さらに、鼻が悪く口呼吸になると、全身に酸素を効率よく取り入れることができないので、心臓や血管に負担をかけ、体内の酸欠から全身にさまざまな弊害をもたらす。
昔は「鼻が悪いと頭も悪くなる」ともいわれていた。それは本当なのか。日本医科大学付属病院・耳鼻咽喉科の大久保公裕教授が言う。
「鼻が悪いと、脳の働きに影響を及ぼすことは確かです。それは、鼻は呼吸や嗅覚の働きだけでなく、『脳の性能を維持する』という重要な役割を担っているからです。そのひとつが『熱くなった脳を冷やす』という働きです。パソコンなどと同じように、脳は使えば使うほど過熱します。鼻は脳の下に位置して、鼻呼吸をすることで血流を介し脳を内側から冷やしているのです。加えて、鼻呼吸ができないと、脳に十分な酸素を供給できなくなります」
鼻呼吸で酸素を体中に行き届かせることは、自律神経を整えることにもつながるという。呼吸が影響するのは体だけに限らない。
瞑想する際は鼻呼吸が基本であることから分かるように、鼻呼吸は精神面にも非常によい影響がある。鼻呼吸を行うことで自律神経に作用し、ストレスが解消され、心を健やかに前向きに維持できるのだ。
しかし、鼻づまりなどの鼻症状があって、長年、口呼吸に慣れてきた人は、突然、鼻呼吸に切り替えるといっても難しい場合もある。まずは鼻づまりの原因となる疾患がないか検査してもらう。特に重篤な疾患がなければ、大久保教授が勧める「鼻の通りをよくするセルフケア」を実践しながら、日常的に「鼻呼吸をすること」を強く意識して切り替えていこう。
「セルフケアには『即効性が期待できるケア』と『長期的に持続すべきケア』の2種類があります。このケアを同時並行で行うことで、初めて症状の改善につながります。『即効性が期待できるケア』の効果には個人差があるので、自分に最もよく効くものを選んで続けてみてください」
■鼻うがい(鼻洗浄)
ぬるま湯250ミリリットルに対し2グラム強の塩を入れて生理食塩水を作り、市販の鼻うがい用の容器に入れる。洗面台に前かがみになり、生理食塩水の入った容器の先(管)を片方の鼻穴に当ててプッシュし、「アー」と声を出しながら注ぐ。すると、生理食塩水が鼻咽腔を通り、反対側の鼻穴と口から出てくる。もう片方の鼻穴から、同じように洗う。あとは軽く鼻をかんで終わり。洗いすぎてもよくないので、多くても1日数回にする。
■タマネギ深呼吸
タマネギに含まれる「硫化アリル」と「ケルセチン」という成分が鼻づまりを解消する。タマネギを皮が付いたまま薄く輪切りにして皿に盛る。タマネギの断面に鼻を近づけて有効成分を吸い込むイメージで、鼻から思いっきり息を吸い込む。口はしっかり閉じて、深呼吸を数回繰り返す。鼻づまりで寝苦しい夜などは、切ったタマネギを枕元に置いても効果が期待できる。
■ペットボトルの脇挟み
体の側面を圧迫すると、その反対側の交感神経が刺激され、鼻づまりが解消されるという原則を応用したもの。鼻づまりを感じている鼻穴と、逆側の脇の下に液体の入ったペットボトルを挟む。ポイントは脇の下に手を挟み、指3本ぐらい下の部分に強めに圧をかける。左右両方を同時にやっても効果はない。
■鼻毛は抜かない切りすぎない
鼻毛は異物の侵入を防ぐフィルターの役割をしている。鼻毛がないと感染症にかかりやすくなったり、アレルギーを発症する原因になる。また、鼻毛は鼻の穴の中の温度や湿度を保つ働きをしている。
■有酸素運動
運動は交感神経が活発になり、副交感神経より優位になると、血流がよくなり鼻づまりを解消する。全身に新鮮な酸素を送り込むことができる有酸素運動(ウオーキング、サイクリング、水泳など)を積極的に行う。
■徹底した掃除
鼻水や鼻づまりの解消には、掃除でホコリなどを徹底的に取り去ることが重要。同時進行でホコリの温床になる「書類の山」などの物を減らすことも大切。捨てられない物はフタや扉を閉めて保管できる所に集約する。鼻の通りをよくすることは、心身の健康管理に欠かせないのだ。
病気を近づけない体のメンテナンス