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高血圧の9割以上が本態性高血圧症 生活習慣と密接な関わり

写真はイメージ
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 厚労省の「国民健康・栄養調査報告」(2014年)によると、「高血圧症」は4300万人といわれています。日本の人口の約3人に1人が高血圧症にかかっている計算になるでしょうか。

 また、17年の同省調査による高血圧症の患者総数が993万7000人ですから、治療を受けていない“隠れ高血圧患者”がいかに多いかということもわかるでしょう。

 心疾患や脳卒中などの引き金になる高血圧症は、年齢や合併症によっても基準が異なります。まず血圧の基準値を押さえておきましょう。

 一般的に高血圧症は、病院・診察室で計測した収縮期血圧が140㎜Hg以上、拡張期血圧が90㎜Hg以上の状態を指します。しかし、最近、米国が発表した高血圧のガイドラインは、収縮期血圧が130㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧が80㎜Hgも高血圧と見なすとしました。

 追従する形で、欧州や日本のガイドラインも米国発表の基準を高血圧境界域とみるようになりました。特に糖尿病や他のリスクを抱える人は、この基準に達したら積極的に治療をするように勧めています。

 治療の基本は、食事療法を含む生活習慣の改善に他なりません。この時点ではまだ降圧剤の治療は見合わせます。

 高血圧症は軽・重症度で分類されていて、Ⅰ度は収縮期血圧140~159㎜Hg/拡張期血圧90~100㎜Hg。Ⅱ度は160~179㎜Hg/100~109㎜Hg。Ⅲ度は180㎜Hg以上/110㎜Hg以上とされています。

 重症度の分類以外に、高血圧が生じる原因によって、さらに「本態性」と「二次性」に分けられます。そのうちのおよそ9割以上が「本態性高血圧症」です。本態性とは原因はわからないものの、特定の症状や病態を来す状態のことをいいます。この本態性高血圧症は、生活習慣と密接に関わっていると考えられますが、具体的には塩分の取り過ぎ、肥満、それに運動不足、ストレス、疲労などが主な原因になります。

 このような環境の中で、塩分以外には心臓の収縮力や細動脈を収縮させる生理活性物質や、ノルアドレナリン(神経伝達物質)、カテコールアミン(同)、アンジオテンシンⅡ(血管収縮、昇圧物質)などが血圧の昇圧に関係しており、高血圧発症の大きな因子になる可能性が示唆されています。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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