その咳、発熱、けだるさは「カビ」が原因かもしれない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 梅雨特有の高温多湿が続いている。気をつけたいのはカビの増殖だ。微生物群の一種であるカビは、現在、確認されている数値だけでも7万~9万種といわれている。

 そのカビは体に悪いイメージがあるが、実は世紀の発見と言われた、抗生物質ペニシリンは「ぺニシリウム」(アオカビ)から誕生した。

 カビの研究からは他に抗がん剤や抗生物質、臓器移植時に使用される免疫抑制剤なども開発されてきている。

 半面、カビにはイメージ通り体に害を与えるものも多い。「水虫」はその代表で、コメや穀物に付くカビが産生した「マイコトキシン」に、発がん性物質が含まれていたことも分かっている。カビの効能は、まさに両極端だ。

「カビは病原性が弱く、通常の生活を送っていたら、それほど心配することもありません。ただし、『アスペルギルス』や『トリコスポロン』などのカビを持続的に吸引する環境にいると、アレルギー性の肺炎やぜんそくを起こす恐れがあります。これは注意したいですね」

 こう語るのは長崎大学大学院の柳原克紀教授(医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野)だ。

 自宅など身近にいるカビの種類にはいくつかある。「クラドスポリウム」(日本名クロカワカビ)=浴室、モルタルなど。「ペニシリウム」(アオカビ)=和洋室など。「アルタナリア」(ススカビ)=和洋室、クーラー内部、塗装などがよく知られている。

 そのうち、住宅の湿気の多い風呂場などに生息する「トリコスポロン」(白カビ)や、「アスペルギルス」(コウジカビ)などを吸い続けていると、人体に影響を及ぼすことになる。

「カビを吸うことによって生体反応を起こし、肺や気管支などに厄介なアレルギー性の炎症を起こしてしまうのです」(柳原教授)

 成熟したカビ(菌糸)から飛び出した胞子(2~100マイクロメートル=1マイクロは1000分の1ミリ)は、窓を開けていると風に乗って外に飛び出す。

 あるいは浮遊しても、胞子によって千差万別だが30分から1時間ほどで床に落ちてしまう。部屋に落ちた胞子は、掃除をすれば問題はない。

 しかし、胞子が空中を浮遊している間に、空気と一緒に吸い込んでしまった場合、問題が生じかねない。吸い込んだカビは気管と気管支を通り、枝分かれしながら細気管支に入る。その先にあるのが「肺胞」だ。酸素と二酸化炭素のガス交換をしている肺胞に入ると、アレルギー反応が起こる。つまり、リンパ球がカビを異物とみなして増加し、細気管支や肺胞を攻撃することで炎症を起こしてしまうのだ。これが「過敏性肺炎」である。

■換気が不可欠

 息切れ、咳、発熱などの症状が表れ、こうした症状が半年以上も続くと「慢性過敏性肺炎」の病名が付く。夏風邪なら10日間もすれば自然と治る。しかし、それ以上に微熱や咳が続くようなら、過敏性肺炎を疑った方がいい。とくに特定の部屋や家にいるときだけ症状が出るという人は要注意だ。

 夏のカビ対策として、柳原教授は「とにかくカビが増えるような環境をつくらないことです。極端に言えば、水分がない状態にしておく。部屋ではカビを吸わないように換気をよくすることも忘れない」という。

 換気は新型コロナ対策にもなる。この時季はとくに注意しよう。

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