Dr.中川 がんサバイバーの知恵

全摘だと生活一変 食道がんで治療後の食生活を守る選択肢

お酒はほどほどに…(C)日刊ゲンダイ

 そうすると、胃が受け持つ食べたものを一時的にためて少しずつ送り出す機能が失われるため、消化吸収が悪くなり、多くは痩せます。腹腔鏡手術だと、入院期間が少なく、傷痕は目立ちませんが、胃の機能低下は免れません。指揮者の小澤征爾さんは食道がんの手術後、15キロ痩せたと報じられました。

 食道周辺の手術は、生活の質を大きく損なう恐れがあります。

 喉頭がんで手術を受けたつんく♂さんが、声を失ったのは記憶に新しいでしょう。咽頭がんもしかりです。では、どうするか。抗がん剤と放射線を組み合わせた化学放射線療法なら食べるための機能や発声を守ることができます。治療成績は、手術と同等ですから、検討の余地は大いにあるでしょう。

3 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事