レビー小体型認知症 自立生活を続けるため知っておきたいこと

仕事を続けられることも…
仕事を続けられることも…(C)日刊ゲンダイ

 漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)が、テレビ番組の企画で「レビー小体型とアルツハイマー型の軽度の認知症」と診断された。アルツハイマー型に比べレビー小体型は聞きなれない病気だ。米山医院(東京・あきる野市)の米山公啓院長に話を聞いた。

 レビー小体型認知症だが、認知症の中ではアルツハイマー型の次に多く、血管性認知症(脳梗塞や脳出血などで発症する認知症)とともに3大認知症といわれている。

「ただし、レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症との区別が難しい面もある。さらに初期では、パーキンソン病との鑑別も難しい」

 もし自分が、あるいは家族がレビー小体型認知症、もしくは認知症と診断されたら?

 知っておきたいのが、「認知症=自立困難」ではないということ。

「レビー小体型もアルツハイマー型も、ある程度までは薬が効きます。自立した生活も送れますし、病気でままならない部分について周囲のサポートを受けられれば仕事も続けられる」

 認知症の症状の一つに記憶力の低下があるが、最近は、自立した生活を送る上で記憶力より注意力のほうが重要だと考えられている。注意力が維持できていれば、家事の中での火の不始末、転倒、風呂場での溺水、誤薬、交通事故、金銭面での失敗などを起こしにくい、というのだ。

 最近、東京歯科大学精神科准教授の宗未来医師が「注意力はアロマによって向上する」という研究結果を発表。諸外国でも例を見ない厳格なエビデンスを示した内容なので、参考にするのも手だ。

「ちなみにレビー小体型認知症単体では、記憶力の低下は、最初のうちはそれほど目立たないケースも少なくありません」

■「暴れる病気」は誤解

 レビー小体型の特徴的な症状は、まず、認知機能の変動。時間、場所、周囲の状況に対する認識、会話をした時の理解力が、いい時と悪い時がある。ただし、記者がレビー小体型認知症発症歴10年以上の人に取材した時、「適切な治療と周囲の理解で、問題を感じることが減る」という話を聞いたことがある。

 次に、幻視。実際には存在しないものが見える。周囲からすると、誰もいない空間に向かって会話をしたりしているように映る。

「これに関しても、周囲がレビー小体型認知症の症状についてしっかり理解していることが大事。レビー小体型認知症の方が現実離れしたことを言っても、頭から否定しない」

 SNS上では「レビー小体型は幻視・幻覚の影響で暴力的になるタイプ」といった内容の声も上がっているが、それは幻視で恐怖を感じ、それを振り払いたい衝動から出ている可能性がある。幻の存在に対して怯えたり興奮したりしている様子であれば、危害を加えないことなどを伝え、落ち着かせる。

 そして、パーキンソン症状だ。体の動きが減る、体の動かし方がぎこちなくなる、体や表情が硬くなる、手が震える、バランスを崩しやすくなる、突進して止まれなくなり転倒するといったことがみられる。

 パーキンソン症状に応じた薬や体操などがあるので、医師に相談するべきだ。

 レビー小体型認知症は、頭部MRI、脳血流SPECT検査、MIBG心筋シンチグラフィーといった画像検査で調べられる。

「レビー小体型か、またはアルツハイマー型かといった鑑別診断よりも、認知症かどうかという診断が重要。患者さんは、これまでと違う自分に不安を感じている。それを解消し、いま困っている症状を改善するために役立てるのです」

 蛭子さんのことは他人事ではない。

関連記事