絶望してはいけない 命をつなぐ僧侶の言葉

「相手は自分とはまったく別種のタイプだと思えば、そんなに腹も立たない」

臨済宗妙心寺派大禅寺の根本一徹住職
臨済宗妙心寺派大禅寺の根本一徹住職(C)日刊ゲンダイ
夫婦は違って当たり前

【Q】コロナでリモートワークになってから、夫婦が家で一緒にいる時間が増えた結果、喧嘩も増えて夫婦仲がギスギスしてしまいました。私がいつも家にいるのがうっとうしいようでどこかに出かけてほしいと妻が言うのですが、自分がローンを払っているのに、なんで家にいてはいけないのかと、腹が立ってつい妻にとげとげしくなります。オフィスワークが復帰してからも、夫婦の間のしこりが消えません。どうしたらいいでしょうか。

【A】家族にひとりずつ部屋があるなんて家は日本ではほとんどないですから大抵はリビングなどの空間を共有していて、夫婦はそこで家にいる時間の大半を一緒に過ごすわけですよね。そうすると家の中に逃げ場がないわけですから、コロナで長時間家にいるようになったら、ギスギスしてしまった、というのも分かるような気がします。

 夫婦がお互い似ている人を選ぶなんていうのは実は違っていて、実はほとんどの夫婦は自分と違ったタイプの相手を選んでいると聞いたことがあります。快適に感じる部屋の温度も、実はほとんどの夫婦が違っている。だから夫は寒がりで妻は暑がりで、夫が寒いからクーラーを切ってくれと言うとか、その反対で夫が暑がりで妻が寒がりということがよくあるらしいんですね。

 これはどうしてかというと、人間はあえて異性と出会うといろいろな情報を読み取って、自分とは違うタイプの女性を選んでいる。そうすることでお互いの長所を備えた子どもが生まれて、人間の種としての多様性が保たれているんだと言うのです。一緒に寝ていても、どちらかがいびきをかく体質で、どちらかが安眠できない体質だというのはよくある話で、だから夫婦が一緒のベッドで寝るなんていうのも、そもそも無理があるのです。

 家族というのは一緒にいる時間が長いからこそ、お互いに問題に思うこととか、抱えているストレスがあふれてしまって、抑えられない怒りのスイッチが入ってしまうということもありますよね。でも私は、そういうときこそ家族は支え合うべきだと思うんです。

 家族が仲良くするには、やはり話すことではないでしょうか。話して理解していく。自分が相手と同じ種類の生き物だと思うから感情がすれ違うので、最初から相手は自分とはまったく別種のタイプなのだということを前提にしていたら、そんなに腹も立たないと思うのです。男性と女性はそもそも脳の作りからして違って、お化け屋敷でも女性はすぐキャーキャー言うのに、男性は出口にたどり着いてからへたりこむというように、男性はつい我慢してしまうのですが、だから仕事でつらいこともなかなか言いだせずにうつ病になってしまったりする。まずい状態になる前にまずは話しあって、お互いを無理に同じ土俵に載せようとしないで違う部分を分かり合えばいいのでは。あとは一日中一緒にいないで、なるべく外に出掛けたり、距離を取る時間を持つことでしょうか。

▽根本一徹(ねもと・いってつ)1972年東京生まれ。臨済宗妙心寺派大禅寺住職。「いのちに向き合う宗教者の会」代表。98年に出家し04年より自死防止活動を開始。国内外の国際会議で「世界仏教徒会議」日本代表発表者として登壇。

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