病気を近づけない体のメンテナンス

下肢静脈<下>足のポンプ機能は手軽な5つの体操で鍛えられる

足首のストレッチも大事
足首のストレッチも大事

 足(=下肢)の表面近くを走る「表在静脈」が拡張し、モコモコと蛇行して浮き上がってくる病気「下肢静脈瘤」。足に「重い、疲れやすい」「かゆみ」「痛み」「こむら返り」「むくみ」などの症状が表れる。

 原因は、下肢の静脈に備わっている血流の逆流を防ぐ「弁」の働きが壊れてしまうこと。下肢静脈を流れる血液は、重力に逆らって心臓に向かって進まなければいけない。

 その血流をスムーズにさせる重要な働きをしているのが「ふくらはぎの筋肉」だ。

 ふくらはぎの筋肉の内部には静脈が張り巡らされている。その筋肉を動かすこと(収縮・弛緩)で静脈が圧迫され、内部の血液が絞り出されるように上に向かって流れる「筋ポンプ」の機能を果たしている。ふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれるのはそのためだ。

 ところが直立不動の立ち仕事など、日常的に足を動かさない生活を続けていると、筋ポンプが働かず静脈の弁に負担がかかり壊れてしまうのだ。

 デスクワークでも、足を動かさない長時間の同一姿勢を日常的に続けていればリスクが高まる。

 日本静脈学会理事長で「慶友会つくば血管センター」(茨城県守谷市)の岩井武尚センター長が言う。

「日本古来の和室の生活スタイル(あぐらや正座)から椅子の生活スタイルに変わり、足の力を使う生活が減ったことで下肢静脈瘤やエコノミークラス症候群(静脈内にできた血栓が飛んで、肺動脈を塞ぐ病気)の発症が20倍以上増えたといわれます。下肢静脈の負担を減らすケアの基本は足を頻繁に動かすこと。歩かなくても、足首を動かすだけでも筋ポンプは働きます」

 そこで日常の合間にできて効果の高い、岩井センター長が勧める足のストレッチ体操を紹介する。立ち姿勢でやるものと、椅子に座った状態でやるものがある。

 ここで紹介する3つは、ふくらはぎの筋肉と、太もも、お尻の筋肉。股関節を効果的に動かすための体操になる。

■かかと浮かせストレッチ

①椅子を用意する。椅子の後ろに立ち、背もたれに両手を添え、肩幅程度に足を開く。その姿勢で少しだけかかとを浮かせる。

②3秒数えながらゆっくりと上げていき、つま先立ちになる。次に3秒かけてゆっくりとかかとを下ろしていき、元のかかとを少し浮かせた姿勢に戻る。この上下運動の最中は、常にかかとを少し浮かせた状態が基本姿勢になる。(無理のない範囲で20回行う)

■股関節ストレッチ

①できるだけ広く足を開いて、足先は、やや外向きにして立つ。背筋を伸ばして、目線は正面を向く。両手は腰に置く。

②背筋を伸ばした姿勢をキープしながら、腰をゆっくり真下に下ろす。膝の高さまでを目標とし、できる限り腰を下ろしたら、ゆっくり腰を上げて元の姿勢に戻る。(無理のない範囲で10回行う)

「この体操は、太もも付近に進行する下肢静脈瘤を防ぐ効果が期待できます。効果を高めるポイントは、腰を下ろすときに猫背にならないことと、膝を前に出さないようにすることです」

■蹴り上げ体操

①椅子を用意する。椅子の後ろに立ち、背もたれに手を添え、背筋を伸ばす。足は肩幅程度に開く。その姿勢をキープしながら3秒ほどかけて、ゆっくりと片足の太ももを上げる。膝が直角になるくらいを目指す。

②前に上げた足を3秒ほどかけて、ゆっくりと後ろへ蹴り伸ばす。足が伸びきったら、3秒かけて①の位置まで太ももを上げる。①~②を10~20回繰り返したら、もう片足も同様に行う。

■足首前後ストレッチ

①椅子に浅く座り、背筋を伸ばし、手で座面の左右を握る。足を前に投げ出すようにし、足先を上に向け、かかとは軽く床につける。

②深呼吸をしながら両方の足先を前後に動かす。10回前後させたら少し休む。10回を1セットで3セット行う。

■足首・足指まわし

①椅子に浅く座り、右足を左足の太ももにのせる。のせた足と反対側の手で足の指をしっかりとつかむ。そのまま足首をゆっくりと大きく20回まわす。反対側の足も同様に行う。

②椅子に座った同じ姿勢のまま、右手で右足の足首を軽くつかむ。次に左手で足の親指から順に1本ずつ、足指の付け根を持って、もむようにまわす。もう片方の足指も同じようにまわす。(それぞれ無理のない範囲で10回ずつ行う)

 どの体操にも共通するポイントは、「軽めに無理なくやること」「できるものだけでいいので毎日コツコツ、長く続けること」だという。セルフケアの参考にしてもらいたい。

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