専門医が教える パンツの中の秘密

交尾の時間が関係する?なぜ人間のペニスには骨がないのか

ゴリラやチンパンジーにはあるのに…

 2016年にロンドン大学の研究チームが科学誌に興味深い論文を発表しています。それは陰茎骨を持つ動物と持たない動物の交尾の違いを比較評価したものです。それによると、陰茎骨の役割は交尾時の長時間の挿入(3分以上)をサポートするもので、交尾時間が長い哺乳類ほど比例して陰茎骨も長くなるとしています。

 さらに長い陰茎骨は、メスを取り合う生殖競争の激しさとも相関していたとしています。つまり「競争相手が多く、交尾時間が長い」ということが、陰茎骨を持つ哺乳類の交尾の特徴という見解です。交尾時間が長ければ、それだけメスが他のオスと交尾する機会が減り、自分の遺伝子を残すことができるわけです。

 一方、人間の場合はどうでしょう。研究チームは、190万年前のホモ・エレクトス(原人)の頃から「一夫一婦制」が広がったため、女性をめぐる生殖競争が起こりにくくなり、次第に消失していったと推測しています。それに人間の男性の場合、挿入から射精までの時間が平均2分程度とし、わざわざ陰茎骨でサポートする必要がないとしています。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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