上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「病院食」制約ある中で1食につき40種類以上が作られている

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 さらに、それぞれに対応するガイドラインに沿って、適切なカロリーや、塩分、タンパク質の量などを計算し、それに応じた食材を選んでメニューを作らなければなりません。また、アレルギー食材を避けたり、鳥インフルエンザが発生した場合などに特定の食材が使えなくなってしまうケースもあり、臨機応変な対応も求められます。

 こうした作業が欠かせない病院食を限られた予算の中でやりくりするのは大変です。とにかく低価格で、なおかつ一度に40種類以上のメニューを用意しなければならないため、外部の業者に完全委託することも難しいといえます。以前、ある外食チェーン企業に声をかけたところ、「この価格とメニュー内容では、とてもウチではできません」との回答でした。

 といっても、すべての調理を院内で行っているわけではありません。厨房施設は備わっていますが、そこではメニューに沿って外部で調理されたそれぞれの食事を振り分けたり、温めたりする作業を主に行っています。病院によってはすべて院内の厨房で調理しているところもありますが、全体的には縮小傾向で、今後はさらに外部に委託する部分が増えていくでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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