京大ウイルス学者が語る新型コロナ「ファクターX」の正体

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私たち人類はいったい、いつから「ウィズコロナ」なのであろうか?

 ヒトの最初のコロナウイルスである229Eが見つかったのは、1968年である。このウイルスは今も毎年冬になると人々に風邪を引き起こす。229Eに関しては、50年以上も「ウィズコロナ」であるのだ。

 ところで、2004年に発見された普通の風邪を引き起こすヒトコロナウイルスであるNL63は、新型コロナウイルスとSARSコロナウイルスとは遺伝的にはやや遠縁であるが、ともに、同じ分子(ACE2)を受容体として使用して細胞内に侵入し、性質は似ている。ヒトに感染し始めた当初は、今回の新型コロナウイルスのように病原性は高かったかも知れない。

 NL63が生じた時期は、ウイルスの塩基配列の比較から明らかになっている。その結果は驚くべきもので、NL63の祖先ウイルスは、11世紀に存在していたと見積もられている。11世紀にNL63の祖先ウイルスがヒトに感染していた証拠はないが、NL63に類似のコロナウイルスがヒトの周りに存在していたことは間違いないだろう。

 11世紀というと紫式部が生きていた平安時代後期である。疫病退散を願って1100年前に始まった祇園祭の長い歴史の中では、コロナウイルスの流行が収まることを祈願して祭りが執り行われたこともあったのかも知れない。

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