「患者や家族と信頼関係を築いた上で、病名や病状、そして残された時間について説明をしました。すると、いったんは失望する患者も、徐々に考えが変わるのです。残された時間を有意義に過ごすようになることが分かりました」
1年後には全ての患者にがん告知をするようになった。この後、進行したがん患者の4人に1人は、在宅治療に移行。翌93年には40%にまで増えている。
ただし、在宅患者の増加は課題も浮き彫りにした。
「在宅医療は人の尊厳が守られるけど、面倒を見る家族の負担は大きかった。家族の人数、年齢、経済力といった家族の“介護力”にも配慮しなければならなかったのです」
蘆野さんは何かしらのサポートが必要だと考え始めた。
(取材・文=稲川美穂子)
在宅緩和医療の第一人者が考える「理想の最期」