Dr.中川 がんサバイバーの知恵

池江璃花子と山本寛斎を分けた明暗…白血病は年齢がカギ

国立競技場の五輪イベントに参加した池江璃花子さん(代表撮影)
発症年齢の中央値は60歳

 急性骨髄性白血病は、いろいろな要素によって「予後が良好なタイプ」「中間型」「不良型」に分類。それを左右するのが、年齢と全身状態、合併症の有無です。一般に60歳以上だと、予後が悪くなりやすく、山本さんの発症は76歳。この年齢だと、移植が難しいと思われます。

 移植には、強力な前処置を行うフル移植とそれより軽い処置で済ませるミニ移植があって、フル移植はせいぜい60歳、ミニ移植でも65歳が限度なのです。

 年齢的にほかの持病もあったでしょうから、そういうことが重なって、発症から5カ月での最期となったのでしょう。急性白血病では、成人の8割が骨髄性で、発症年齢の中央値は60歳。急性骨髄性白血病を成人で発症すると、残念な転機となるケースが少なくないのが現状です。

 一方、池江さんが克服した急性リンパ性白血病は、成人の2割、小児の8割を占めます。池江さんは発症時、18歳で、15歳以下の小児ではなく、ハイティーンですが、このタイプの白血病は、抗がん剤が効きやすく、ほかに比べると治りやすいのです。特に小児なら、治癒率は8~9割で、そのうち7割近くは移植せずとも抗がん剤で治ります。

 私も60歳。新型コロナウイルスと同様に、60歳以上であることは、白血病の予後を悪くする大きな要因なのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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