新型コロナから家庭を守るには「食事の在り方」を変える

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 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大が止まらない。感染経路不明の新規感染者が急増、クラスターつぶしだけでは感染拡大を防げなくなったことを国も専門家も認めるべきではないだろうか。感染者は全世代で増え続けている。

 もはや、感染リスクの高い場所に立ち寄らず、マスク、手洗いさえしていれば大丈夫、という時期は過ぎ、新型コロナウイルス感染症が普通の家庭に侵入してきていると考えるべき時期となっている。ではそのリスクを減らすにはどうすればいいのか? 公衆衛生の専門家の岩室紳也医師に聞いた。

「私は東京や神奈川県内にある繁華街の夜の接待場所での感染予防指導をしてきましたが、いよいよ家庭内でもそうしたことが必要になっていると思います。そのためにまず知っておきたいのは新型コロナに限らず、感染症対策の最重要点は、周りの環境からウイルスをなくすことではなく、体内に入るウイルス量を減らすことです」

 33年間動物ウイルス学の研究を続けてきた京都大学ウイルス再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授も本紙(日刊ゲンダイ)の取材に「身の回りからウイルスを完全に駆逐することはできません。自分の力でできることは極力ウイルスを体内に入れないことです」と語っている。

「私も同感です。そのためにはまず、家庭内での食事の在り方を変えることです。料理をする人は、料理中は大声でおしゃべりをせず、料理は各人用に取り分けて出す。箸やスプーンは共有しない。食事前は全員が必ず手洗いを行う。食事中は他の人の料理に自分の飛沫が飛ばないように気を配り、食後のお茶の時間に、テレビを見るなど、同じ方向で話すといった飛沫感染予防に配慮する事が大切です」

 なぜ、食事の仕方に気を配る必要があるのか?

「感染者の飛沫が、直接人の口に入る、料理や飲み物、皿やコップに付着し、それが家庭内感染の感染源になる可能性が高いからです。新型コロナの感染経路は飛沫感染と接触感染が主で、密室、密閉、密集という特殊な環境で初めてエアロゾルがあると考えられています。それはいまも変わっていません」

 飛沫とエアロゾルの違いは、飛沫の大きさによって区別され、前者は直径5マイクロメートル以上で重いため飛距離はせいぜい1~2メートル、後者は同4マイクロメートル以下で軽いため長時間浮遊し、遠くまで浮遊し続けるといわれている。

「最近、新規の感染者が増えているのはエアロゾルでも感染するように新型コロナウイルスが変異したのではないか、と考えてやはり、エアロゾルに注意しなければならない、と訴えている専門家が大勢います。しかし、人が吐き出す全飛沫量のなかで飛沫の量はかなり少ないことを忘れてはいけません。いわゆるマイクロ飛沫と呼ばれる、飛沫の直径が短い飛沫であるエアロゾルは、大声を出したときの飛沫量全体の70万分の1といわれています。つまり、ほとんどの飛沫は遠くまで飛ばずに身近なところに落ちるのです」

 しかも、大きな飛沫に比べて直径の短いエアロゾルに含まれるウイルス量は想像以上に少なくなる。 「仮に直径500マイクロメートルの飛沫と5マイクロメートルの飛沫との体積の差を考えてみましょう。後者を1と仮定すると前者は100万倍の体積となります。ウイルス量が飛沫やエアロゾルの体積に比例すると考えると、おしゃべりしている人の2メートル以内に落ちるウイルス量は空気中に長時間漂う飛沫核に比べて断然多い。食事のときに恐れるべきはやはり大きな飛沫であり、それが降り注ぐ食卓の上の料理なのです」

 なかには、新型コロナに感染するかどうかはその人の体質で、1個のウイルスで感染する人もいるし、1万個のウイルスでも感染しないひとがいる、と主張し、食卓の上に落ちる飛沫を軽く考える人もいるだろう。しかし、努力により感染リスクを軽減できるのは、食卓の上の飛沫を減らすだろう。

「感染防止の基本は体内に入るウイルス量を減らすことが基本です。そのためには食事の前に手を洗い料理の上に乗り出しておしゃべりしたりしないようにして、自分の食べ物は家族といえども飛沫が入らないように気を配る必要があるのです」

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