子宮頸がん 日本で30~40代女性に増加している理由とは?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 7月21日、子宮頚がんを予防する新たなワクチンが承認された。子宮頚がん対策はどう変わるのか? NTT東日本関東病院産婦人科の近藤一成主任医長に聞いた。

 30~40代女性に増えている子宮頚がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で発症するがんだ。

 この感染を防ぐのがHPVワクチンで、日本では2種類のウイルス感染を防ぐ2価と4種類の感染を防ぐ4価のワクチンが承認されていた。今回承認されたのは、9種類のウイルス感染を防ぐ「9価」だ。

「HPVワクチンはWHOが推奨しており、世界各国で予防接種プログラムが導入されています。主流は9価のHPVワクチンで、女児への定期接種はもちろん、男児への定期接種を行う国もあります。男児を含むのは、HPV感染は中咽頭がんや陰茎がんの発症に関係していることも明らかになっているからです」

 一方、日本では2013年、厚労省が2価と4価の「積極的勧奨」を取り下げた。

 接種後に慢性疼痛や運動障害などの症状が報告されたためだ。小6から高1の女児は無料で受けられる「定期接種」の対象となっているものの、希望者は各市区町村の予防接種担当課へワクチン接種の問診票を請求しなくてはならず、接種率は0・3%だ。9価はまだ定期接種になっておらず、自費。数万円かかることを考えると、0・3%を超えはしないだろう。

「これは、異常としかいいようがない低さ。9価ワクチンは子宮頚がんを90%予防できるといわれています。結果、日本以外の国では子宮頚がんの発症者が減り、将来的には“過去のがん”になるとみられています。例えば接種率の高いオーストラリアでは子宮頚がんの罹患率が10万人当たり7人を切り、2066年には10万人当たり1人になると推測されています。一方、日本の罹患率は10万人当たり14人です」

■「日本は大幅に遅れている」

 積極的勧奨とならないのは、HPVワクチンの副反応が問題視されているからだ。

 しかし、3万人対象の大規模調査(名古屋スタディ)で、副反応とされていたさまざまな症状はHPVワクチンと無関係であるという結果が出ている。すべてのHPVワクチンに対し、WHOは「安全上の問題はない」としている。

 HPVワクチンを打たなくても、検診で早期発見できればいいのでは……という声もある。

 しかし早期発見であっても、治療で将来の妊娠時の流産や早産のリスクが高まる。「現在は子宮頚がんではないが、この先はがん化するかもしれない」という「異形成」が検診で見つかった場合、3~6カ月ごとの定期検診が必要で、がん化が見つかるまでずっと続く。

 そもそも検診率は低い。進行がんになれば予後は悪く、排尿障害、下肢のリンパ浮腫など術後の後遺症がある。なお、子宮頚がんの死亡者数は年間約2900人だ。

「HPVワクチンが浸透している国では、HPVウイルスの検査で陰性なら5年は検診不要、つまり子宮頚がん発症リスクはほぼない、としているところもあります。日本は大幅に遅れているとしか言いようがない」

 親はHPVワクチン接種について正しい知識を持って子供と話し合った方がいい。定期接種世代で接種を考えているなら、4価なら居住地域の市区町村の予防接種担当課へ、9価であれば接種を行っている小児科、産婦人科などへ相談を。

「4価か9価か迷うなら、費用はかかるものの、子宮頚がん予防率が高い9価をお勧めします。セックス経験がある人も、特に20~30代と若い年代なら、ワクチン接種を検討した方がいい」

 予防できるがん。チャンスを逃すべきではない。

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