コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

料理人に指導する医師が語る 感染しない・させない食事法

食べる直前に小分けにする
食べる直前に小分けにする(C)PIXTA

「プロの料理屋さんであれ、家庭であれ、ウイルスとは、どこからどこへどうやって感染するのか。これを的確に知っておくことが感染予防対策の基本です」

 こう語るのは公衆衛生が専門の岩室紳也医師だ。集団感染が発生した直後の東京・新宿のホストクラブを含め、幼稚園、スポーツ施設、高齢者関連施設で新型コロナウイルス感染症の予防指導を行っている。

 8月上旬、寿司職人の養成学校「東京すしアカデミー」(東京・西新宿)や寿司店で感染予防を指導する岩室医師に同行した。

「新型コロナウイルスを含む飛沫の大きさは5マイクロメートル(1マイクロメートルは0・001ミリメートル)から500マイクロメートルぐらいです。5マイクロメートルと500マイクロメートルでは体積が100万倍違い、その分、多くのウイルスを含んでいます」

 1時間程度、空気中をさまようエアロゾル対策として換気も重要だが、飲食店で特に気を付けたいのは「接触・媒介感染」だという。

 調理する人は自分が感染している可能性を常に意識し、目の前の食材に飛沫(ウイルス)を付着させないように調理にあたることが重要。ウイルスが付着しても、その後に火を通せば問題はないが、生で食べる寿司、刺し身などには細心の注意が必要だ。

 ヒトから外に出た飛沫は重さですぐ落下する。マスク着用は当然だが、マスクであごがすっぽりと隠れ、飛沫が食材に落下しないように不織布マスクを着用しないと意味はないという。寿司店では細心の注意を払って下ごしらえを行い、飛沫が付着しないように蓋付きの容器に保存し、客に出す直前に取り出して調理する。

 客の行動にも気を配る。

「例えば、トイレ内で手をアルコール消毒しても、消毒した手でドアノブに触れて出てくると、手にウイルスが付着してしまう危険性があります。だから、席に戻ったお客さんには手指の消毒をしていただくべきです」

 店の料理人も同じだ。水道で手や包丁を洗う。直後、手で蛇口をひねると、蛇口にウイルスが付着していた場合、感染するリスクが高くなってしまう。

 ビールや日本酒(とっくり)も、手で飲み口には触れないのは言うまでもない。

「テーブルを囲んで寿司を食べると、会話で出た飛沫が寿司に落下します。お店側は小出しにすることで飛沫が付着するリスクを減らせます。客は自分が食べるものを近くに引き寄せ、相手から遠ざけることも大事。この食事法は自宅でも同じことで
す」

 つまり、家庭で大事なことは、食器は洗ってから使い、包丁などは食材ごとに洗う。生ものは特に慎重に扱い、パックを開けたら手を洗う。洗える食材なら、洗ってから出す。

 火を通す食材は、火を通した後は1人分ずつ小分けにして出す。自分が食べるものはできるだけ手前に寄せる。大きめのテーブルで食事を取り、食器は必ず拭いてから並べる。当然、食べる直前に全員が手を洗う。

 ちなみに岩室医師は、帰宅すると食事の前に必ず風呂に入る習慣を身に付けている。体に付着しているウイルスをすべて流すためだという。

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