Dr.中川 がんサバイバーの知恵

大腸がんは「ステージ4」でも手術できれば生きられる

大腸がんで亡くなった轟二郎さん(2001年撮影)/
大腸がんで亡くなった轟二郎さん(2001年撮影)/(C)日刊ゲンダイ

 タレントの轟二郎さん(享年65)の命を奪ったのは、大腸がんと報じられました。訃報が流れた6日の公式ブログには、「大腸がんを患ってから1年半ほどの闘病の末でした」と書かれていて、2月には、手の施しようがなく、摘出手術ができないと告知されていたそうです。それから半年あまりの最期。つらい闘病生活だったかもしれません。

 大腸がんは、2019年の罹患数が1位の15万5400人、死亡数が2位の5万4200人。食の欧米化が定着し、最近急増しているがんです。その説明に加え、轟さんの訃報に触れると、怖いがんと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

 大腸がんの10年生存率は、ステージ1が92・9%で、ステージ2は81・0%、ステージ3は73・5%。末期のステージ4でも12・7%に上るのです。大腸がんと並んで治りやすいがんといわれる胃がんも、ステージ1の10年生存率は90・7%ですが、ステージ2で54・9%に下がり、ステージ4は4・4%ですから、その差は歴然。

 その点からみると、轟さんの闘病生活は非常に短く、かなり進行していて、転移していたことがうかがえます。

 大腸がんで転移しやすいのは、肝臓と肺です。大腸がんがほかのがんと異なるのは、原発の大腸がんの進行が食い止められていると、転移した肝臓や肺も手術が可能で、治癒の可能性が見込めるのです。

 大腸がんをまず手術した後、しばらくして肝臓や肺に再発。再発部位を改めて手術して完治したという患者さんを何人も目にしています。一般によく知られた方では、ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(80)が有名でしょう。

 鳥越さんは65歳でステージ2の大腸がんが見つかると、手術で切除。その後、肺や肝臓への転移が判明し、69歳までに4回の手術を受けているといいます。再発後は遠隔転移があるのでステージ4ですが、転移した部位を手術で切除できさえすれば、元気に生活できることのよい例といえるでしょう。

 肝臓と肺に加え、この4月からは5個までのリンパ節転移についても、定位放射線治療が保険適用に。より負担の軽い治療が可能になっています。骨転移の痛みなどは、放射線がとても有効です。

 ステージ4でも、打つ手があるのが大腸がんですが、できるだけ早期発見するに越したことはありません。鳥越さんはトイレで異変に気づいたことがキッカケのようで、ステージ2。早期発見のカギとなる便潜血検査は受けておらず、いまも元気に活躍されているのは不幸中の幸いでしょう。

 しかし、不幸中の幸いはすべての人に当てはまることではありません。確実に「幸い」をつかむには、毎年必ず便潜血検査を受けること。それに尽きます。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事