新型コロナ後遺症の正体

筋痛性脳脊髄炎に注意 SARSでは1年後に17%が職場復帰できず

2003年、カナダでSARSが流行し273人が感染した(退院するSARS高齢患者を、彼女の車まで付き添う防護服の病院従業員)/(C)ロイター

「欧米に比べると日本での新型コロナウイルスの死者数は確かに少ないのですが、抗体検査などの結果から推測すると、感染者数も桁違いに少ないと考えられます。しかし、台湾など東アジアの国に比べれば、死者数は決して少なくない。国際医療センターの報告では、日本が7.5%、中国が28%、英国が26%、米ニューヨーク州は21~24%となっていますが、ドイツの死亡率は日本より低いと推定されます」

 注意したいのは欧米の死亡率は患者急増パニック期であることだ。

「7月末から8月にかけての感染者数に対する死亡率は日本と同等から2倍程度にすぎないのです。重症の患者さんでは、退院後も肺や心臓の機能が十分回復せず、元の社会生活に戻れない可能性があります。また、軽症であっても、脳炎や筋炎などの後遺症で、頭痛や筋痛などの違和感が残り、完全に正常化するにはかなりの時間を要します。この原因として、感染して発症後、ウイルスが2週間くらいでは消失せず、2カ月以上にわたり体の中に増殖できる状態で残っている可能性が示唆されています」

 最近は若い世代の感染者が増えている。

「若い人は感染しても症状が無いか軽症で、すぐに体力も快復するといわれていますが、少なからぬ若者が長期間後遺症に悩まされていることも認識しておく必要があります」

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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