6つの変異を獲得した 日本独自の新型コロナウイルスの正体

緊急事態宣言解除後、繁華街に人が戻ってきた(C)日刊ゲンダイ

■変異速度は変わらず

 そして5月中旬の緊急事態宣言解除のあと、徐々に以前の生活に戻すように活動が再開すると、それに伴って感染者も増加した。それは海外からの流入は限られていたので、日本国内に存在していた多様性の小さい新型コロナウイルスの集団が急激に広がったと考えられる。多様性が小さかったため、共通する変異を持っていたものが多かったのだろう。

 上記のように考えると、この6つの変異というのは、ウイルスが生存するための有利な機能を獲得したというよりも、偶然の影響が大きいと考えられる。実際に、新型コロナウイルスは半月に1つの変異を蓄積していくことが知られているため、3月の中旬と6月に採取された新型コロナウイルスのゲノム配列を比較すると、6つの変異というのは、いままで知られている変異の速度と同じである。したがって、現在見られている患者数の上昇は、新型コロナウイルスの変異が要因ではなく、単純に感染する機会が増えたことに起因するのであろう。

 ちなみに、今後予定される入国制限緩和で一定数の外国由来の変異ウイルスが日本国内に流入するとしても、必ずしもそれが主流になって感染者数が激増するとは限らないと考える。

(東海大学医学部分子生命科学講師・中川草)

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