がんと向き合い生きていく

勉強を欠かさなかった先輩医師は"霊水"を信じたのだろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■パンフレットを見てなんとも答えようがなかった

 引退してからは、月に1回くらい病院の図書室を訪れ、文献を探して勉強されているようでした。その際、勉強を終えて帰られる前に私の部屋に立ち寄ることもありました。私が不在にしていると、文献のコピーを置いていかれます。多くは最新の英文で書かれた論文でした。

 部屋に私がいるときは、ニコニコしながら「これを読んでみてください」と入って来られます。ある時は「肝臓がんの発生について面白く書いてあります」と、ある時は「がんはこんなことまで分かってきました」と……。私は「年老いられても勉強が好きなんだ。すごいな」と、いつもそう思っていました。

 ある日のことです。いつものように私の部屋を訪れたN先生が「これを見てください。この水、私は効果があると思うのだがどうだろう」と言いながら、パンフレットを差し出されました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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