がんと向き合い生きていく

勉強を欠かさなかった先輩医師は"霊水"を信じたのだろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 それを目にして私は訝りました。「○○霊水」と書かれているのです。私はなんとも答えに困りました。

「そのパンフレットは置いていくから、読んでおいてください」

 そう言って、N先生は帰られました。

 霊水を紹介しているパンフレットには、宗教的なことは書かれていませんでした。水に含まれている成分、NaやMgなどについての説明がありました。効能として、延命、がん、高血圧などと記されています。

 私は、ある有名な寺にある「滝の水」を思い出しました。参拝した後、多くの方がペットボトルにその水を汲まれていきます。御利益に、延命、恋愛成就、学業成就とあります。なるほど、神社のお守りと同じです。

 N先生が次に来られた時、「どうだった?」と聞かれ、私は「なんとも答えようがありません」と返事をしました。N先生ともあろう方が、あの科学者が、このような水を信じるのだろうか? とても疑問でしたが、そのワケを聞くことはしませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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