自由診療のPCR検査は2万~4万超が相場…精度に差はある?

検体の採取には慣れや技術が必要
検体の採取には慣れや技術が必要(C)NNA/共同通信イメージズ

 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断する「PCR検査」。日本では、5月ごろまで症状があっても検査を受けられない人が続出していたが、現在は1日最大5万6000件の検査能力があるとされている。

 3月6日から保険適用され、医師の判断によって保健所を通さずに検査できるようになった。しかし、公費で行う「行政検査」の対象となるのは、発熱など疑わしい症状があり医師が必要だと認めた人、感染が確認された人の濃厚接触者、特定の地域や集団でクラスターの連鎖が生じやすいと保健所から判断された場合が原則で、いまだにハードルは高い。

 そのため、「ひょっとしたら感染しているかもしれないから念のため検査を受けてみたい」「高齢の両親と一緒に暮らしているから感染の有無を確認したい」といった人に向け、自由診療でPCR検査が受けられる医療機関が増えている。日本渡航医学会が公表している「ビジネス渡航者へのPCR検査の検体採取および検査証明の発行が可能な医療機関」では、全国で139の施設が登録されている。

 公費による行政検査では1回にかかる費用は1万8000円で、自己負担分は医療機関の初診料などで2000円程度で済む。

 一方、保険が適用されない自由診療でPCR検査を受ける場合、2万~4万円超の費用が相場になっている。

 決して安いとはいえない金額だけに、せっかく検査するなら正しく受けたい。

■どの医療機関で受けても問題ない?

 PCR検査は鼻の奥や喉、唾液から検体を採取して、目的のウイルスだけが持つ特定の遺伝子を増幅させて感染の有無を調べる方法だ。1986年に発明されて以来、遺伝子研究では欠かせない技術で、基礎研究はもちろん、感染症の診断や科学捜査に至るまで幅広く活用されている。

「遺伝子を増幅させるには専用の試薬や機器が必要で、検体は設備が整った医療機関や検査施設に運ばれます。登場から30年以上経っていることもあって、検体から遺伝子を抽出したり、増幅させるための試薬や専用機器などの検査に使われる機材は、一定の水準にあるものが揃っています。ですから、どの医療機関でPCR検査を受けても、精度に大きな差はありません」(岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏)

 自由診療での検査費用はあくまでも“言い値”で、実施している医療機関の“場所代”や“手間賃”などがプラスアルファされていると考えていい。PCR検査は、高額なら優秀というわけではないのだ。

■偽陰性・偽陽性の心配は?

 PCR検査は精度が低く、偽陰性や偽陽性が多く発生するといわれているが、本当なのか。

「PCR検査の特異度(感染していない人を正しく陰性と判定する割合)は99・99%以上と非常に高く、感度(感染者のうち検査で陽性と判定する割合)は70%といわれています。ほかの検査に比べれば高い数字ですが、偽陰性や偽陽性が出てしまうのは事実です。ただ、これは方法そのものよりも、検体の採取に問題があるケースが多いといわれています。綿棒を鼻から挿入して喉の奥の粘膜を採取する『鼻咽頭ぬぐい法』は、医療者側に慣れや技術が必要で、きちんとぬぐえないと検査の感度が下がってしまいます。検査の実施件数が多い医療機関を選ぶようにしてください」(神崎浩孝氏)

 唾液を採取する方法は、検査を受ける人が専用容器に自分で唾液を入れるため、医療者側による差は出ない。ただし、検査の直前に飲食したり、歯みがきやうがいをすると、口腔内のウイルスの量が減って精度が低くなってしまう可能性があるため、検査は食後2時間以上経ってから受ける必要がある。

 また、PCR検査でわかるのは「その時点で感染しているかどうか」で、たとえ陰性だったとしても、直後に感染する可能性がある。あくまでも目安と考えて、感染対策を怠ってはいけない。

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