病気を近づけない体のメンテナンス

肌<下>習慣化したい「保湿」「冷却」「清潔」のポイント

写真はイメージ
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 肌の「かゆみ」「カサカサ」「赤み」「吹き出物」などの症状。今は夏・冬ともにエアコンを使っているので、乾燥して「敏感肌」や「乾燥肌」などの弱い肌になりやすい。さらに、夏場の紫外線は追い打ちをかけて、弱った肌にダメージを与える。

 普段からどのようなケアを心がけるといいのか。

 弱い肌を強くして、皮膚のトラブルを防ぐ対策を「肌活」と称する「うるおい皮ふ科クリニック」(千葉県松戸市)の豊田雅彦院長が言う。

「肌活は単なるスキンケアだけを指すのではなく、腸内フローラ(細菌叢)のバランスを整えて体を健康にする『腸活』と同じように医学的意味があります。皮膚には皮膚フローラ(細菌叢)があり、アレルギーや免疫機能と強く結びついています。この皮膚フローラのバランスを保つことも肌活の目的のひとつです。肌活で実践してもらいたい習慣は、『①保湿』『②冷却』『③清潔』の3つです」

 どんなことをすればいいのか。ポイントを説明してもらった。

①乾燥防ぎ潤わせる【保湿】

 肌活の中でも最も大切な習慣になる。洗顔後や入浴後に保湿剤をたっぷりと塗る。保湿剤は、最初に「化粧水」を塗って肌に水分を与え、その上から水分の蒸発を防ぐ「保護剤(乳液やクリーム)」を塗るという組み合わせが基本になる。

 肌を守っているバリアー機能は、表皮の一番上にある死んだ細胞の「角質細胞」がウロコのように重なり合った「角質層」と、その上を覆っている皮脂と汗が混じった「皮脂膜」が担っている。

 角質層にある「セラミド」や「天然保湿因子(NMF)」といった保湿物質が水分を保ち、その上を覆う皮脂膜が水分の蒸発を防いでいるのだ。洗顔や入浴で皮脂膜が洗い流されると、保湿物質の水分が蒸発して肌が乾燥しやすくなる。その前に保湿することが大切。特に風呂上がりは10分以内に塗るのがいいという。

 塗り方は肘や膝など、シワのある部分はシワに沿って塗る。塗る量はテカテカするくらい塗るのが目安。

 塗った後にティッシュペーパーで軽く押さえて、ティッシュが貼り付くようなら十分の量が塗れているという。

「国立成育医療研究センターは、生後1週間以内の赤ちゃんの全身に保湿剤を塗ると、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上も低下したと報告しています。この劇的な改善の理由として、毎日入浴後に保湿剤を塗ったことで、肌のバリアー機能の一部が改善されたことを挙げています」

②内部の熱を冷ます【冷却】

 弱い肌が赤くなったり、かゆくなったりするのは、皮膚が熱(炎症)を持つから。肌の熱を冷ませば、それを抑えられるわけだ。そのためには運動をして「サラッとしてさわやかな、いい汗」をかく習慣が大切になる。汗は、蒸発する時に熱を奪って(気化熱で)体温を下げるだけでなく、肌の潤い(保湿)を保つ。それに皮脂と混ざって皮脂膜の材料になる。また、「いい汗」はせっけんに近い弱アルカリ性で、肌の表面の汚れを流してくれるので「清潔」にもつながるのだ。「ただし、汗は、かいたら早く洗い流すことが肝心です。健康な肌は弱酸性なので、弱アルカリ性の汗を放置すると、皮膚フローラが崩れます。それに、放置された汗は細菌の格好のエサになります。運動で汗をかいたら軽くシャワーを浴びたり、汗拭きシートで拭き取ったり、衣類を着替えたりすることが大切です」

③入浴で洗い過ぎない【清潔】

 何といっても毎日の「お風呂」が基本になる。しかし、入り方を間違うと逆に肌にダメージを与えるので注意しよう。

 まず長風呂は、肌の保湿・バリアー機能を担っている「皮脂」「セラミド」「天然保湿因子」が体から抜けていってしまうので、やってはいけない。熱い湯もいけない。入浴は38~40度くらいのぬるめのお湯で、漬かる時間は10分以内にする。

「入浴やシャワーは、短時間なら一日何回入ってもかまいません。しかし、せっけんを使って洗うのは一日1回にし、あとはお湯だけで洗ってください。それに硬いナイロンタオルで全身をゴシゴシこするのはいけません。3つの保湿物質がゴッソリ失われてしまいます。体を洗うのは肌に優しい『日本手ぬぐい』を使うのがいいでしょう」

 肌を清潔に保つのは、皮膚フローラのバランスを上手に保つこととほぼイコール。「回数多く洗い過ぎない」「こすらない」「洗浄剤を使い過ぎない」の3つがポイントだ。

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