お酒を飲むと多弁になり、さまざまなアイデアが思い浮かぶということもあるかもしれませんが、一般的には認知機能が低下するように思われます。飲酒運転が禁止されているのも、摂取したアルコールによって情報処理能力が低下するからです。
しかし、認知機能に対する飲酒の長期的な影響についてはよく分かっていませんでした。そんな中、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナルに、飲酒と認知機能の関連を検討した研究論文が、2020年6月1日付で掲載されました。
この研究では、米国に在住している1万9887人(平均61・8歳)が対象となっています。被験者は過去3カ月間の飲酒状況について調査され、その後の認知機能への影響が検討されました。なお、結果に影響しうる年齢、性別、喫煙状況などの因子について、統計的に補正して解析をしています。
平均で9・1年にわたる追跡調査の結果、飲酒をしない人に比べて、低~中等度の飲酒をする人(女性で週8杯未満、男性で週15杯未満)では、認知機能低下の度合いが34%、統計的にも有意に低いことが示されました。
飲酒量は時間経過とともに変化する可能性があり、当初は飲酒しなかった人でも、その後に飲酒量が増えることもあるでしょう。他方で、加齢とともに健康に対する関心が高まり、飲酒量が減ることもあります。したがって、この結果は必ずしも飲酒と認知機能の関係を適切に評価できているとはいえないかもしれません。
また、本研究は長期的な認知機能に対する影響についての調査で、お酒を飲んだ直後では明らかな情報処理能力の低下を来すことでしょう。飲酒をしたら車の運転や危険な機械操作をしてはいけないことは言うまでもありません。
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