Dr.中川 がんサバイバーの知恵

人気シェフは手術延期…セカンドオピニオンは放射線科医にも相談を

茂出木浩司さん(C)日刊ゲンダイ

 で、今回改めて取り上げたいのは、治療の選択とセカンドオピニオンについて。茂出木さんは、セカンドオピニオンを取り、手術延期の戦略を練ったといいます。推測するに、そのセカンドオピニオンの内容は手術のみで、放射線の説明や可能性はテーマになっていないと思うのです。

 肺がんの4割を占める肺腺がんはステージ1なら、手術が基本。ですから茂出木さんの選択は間違いではありません。しかし、早期は放射線も、治療成績は手術と同じです。

 早期の手術はメスで胸を開くことなく、内視鏡の胸腔鏡で行うことができます。それでも5日程度の入院が必要です。仕事をする人にとっては、それがネックになりやすい。茂出木さんも、短期間とはいえ現場を離れることを気にされたのかもしれません。

 一方、放射線は通院で照射でき、東大病院の場合、照射時間はわずか100秒。着替えや準備の時間を入れても十数分。病院についてから会計まで30分ほど。照射日数は定位放射線は4日、最新の粒子線は1日です。この治療時間なら、仕事がある人も、現場を離れることなくやりくりできるのではないでしょうか。そうすれば、治療を先延ばしする必要がありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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