がんと向き合い生きていく

膵臓がん 切除は無理でも放射線の「術中照射」で無事に退院

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 八百屋を営んでいるKさん(65歳・男性)は、父親が胃がんで亡くなったこともあり、がんを気にして毎年、健診を受けています。

 長年、朝のコーヒー、晩酌、たばこを欠かさない毎日を送ってきました。コーヒーは、がんとの関連を指摘する報告を目にして控えた時期もありましたが、それが否定されたことを聞いてからは毎日飲んでいます。

 日本酒2合の晩酌はずっと続けていますが、たばこは10年前にやめました。自分だけでなく、周囲の家族への影響が指摘されている上、初めての孫が生まれたからです。

 そんなKさんは3カ月ほど前から背中が時々痛み、下痢をしやすくなっていました。「いつも店で重い荷物を持っているからだろう」と思って、整形外科医院を受診しましたが、X線検査では骨に問題はありませんでした。

 そこで、近所の内科を受診しました。すぐに採血検査をされ、お昼前、空腹になったところで再度受診し、腹部超音波検査を行いました。その結果、「膵臓に腫瘍がある。つまり膵臓がんの疑い」と告げられ、市の総合病院を紹介されることになったのです。さらに採血検査では、「糖尿病の傾向がある」とも言われました。Kさんは「膵臓がん」と聞いただけで、もうその時はダメかと思ったそうです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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