コロナ第2波に打ち勝つ最新知識

ショックが引き金に 世界中で報告「コロナ脱毛」2つの理由

写真はイメージ
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 新型コロナの後遺症の中で意外とされているのが「抜け毛」だ。4月に感染した女優のアリッサ・ミラノは自身のツイッターで、髪の毛をとかすと大量の抜け毛が出る動画を投稿。「新型コロナウイルスによる髪の毛への影響をみんなに見せておこうと思って。この病気を甘く見ないで」と警告し、話題になった。同様の後遺症は世界中で報告されている。

 なぜ、新型コロナになると髪の毛が抜けるのか? その理由のひとつと考えられているのが、感染したという事実が強い精神的ショックとなり、ヘアサイクルを狂わせるというものだ。

 一般的なヘアサイクル(毛周期)は、「成長期」「退行期」「休止期」を一回りに、繰り返し髪の毛が生え替わっている。成長期は古い髪が抜けて新しい毛髪が生まれ成長していく時期をいい、毛母細胞が分裂を開始し、新しい髪が古い髪を押し出しながら成長する。退行期になると毛乳頭細胞が退縮し始め、髪の成長が止まる。毛母細胞の分裂がストップし、休止期を迎える準備をする。休止期に入ると毛乳頭細胞の活動が休止し、髪の成長が完全停止し、次の成長期に向けて準備する。

 新型コロナの脱毛は「急性休止期脱毛」であり、精神的ストレスが生じた数カ月後に、成長期の毛髪が急速に休止期に移行してしまうために起こるというわけだ。

 もうひとつは感染者の長引く自粛による生活習慣の乱れがヘア状態を悪化させたというもの。一般の人も自粛生活しているが、感染した人はより長く厳しい自粛生活を強いられる。外の世界と完全に遮断された環境での生活であり、生活リズムは乱れる。

 まず、睡眠パターンが変化する。テレビやSNSが手放せなくなり寝る時間が遅くなる。夜間にしっかりと眠らないことで成長ホルモンが分泌されず、髪が成長しなくなる。

 食生活も変わる。デリバリーが増えて偏食となり、栄養がアンバランスになる。その結果、脂質の取りすぎで頭皮毛穴に皮脂が詰まるなど、頭皮環境が悪化する。

 自粛生活は運動不足も招く。コロナウイルス感染症蔓延前と外出自粛後で、1日の歩数が3000歩未満となっている人が17・8%から28・4%に急増している。運動不足は血流を悪化させ、頭皮が乾燥しやすくなり抜け毛の原因にもなる。

 人に会えない、行けない、外出でも感染に気を使わなければならないなどの非日常は、自分が思っている以上にストレスとなる。ストレスはホルモンバランスを乱したり自律神経を乱したりして、脱毛の引き金になるとも考えられる。むろん、新型コロナによる免疫反応の変化や慢性炎症も考えられないことではないが、証明されておらず、現時点では精神的ストレスや生活習慣の乱れがコロナ脱毛につながったとみられている。

 ちなみに米国では通常の生活に戻れば、抜け毛は自然と減るが、9カ月くらい回復しないと示唆されている。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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