せっかく運動したのに効果がない「筋トレロス」何がダメ?

トレーニングをしているのに…(写真はイメージ)
トレーニングをしているのに…(写真はイメージ)

 自粛生活の影響などで筋力低下を感じている人が増えている。効率良い筋力アップ方法はないものか。

 立命館大学スポーツ健康科学部・後藤一成教授によれば、若者であっても動かなければテキメンに筋力が低下する。オランダで若年男性15人を対象にした研究で、片足を使わない「不活動」の状態で過ごしてもらったところ、わずか7日間で大腿部の筋断面積と筋力が低下していた。

 日々の活動量が減り、スポーツジムにも行きにくい昨今を考えると、何らかのトレーニングはやった方がいい。しかし、自己流のトレーニングにはリスクが潜む。

「トレーニングでは疲労が生じますが、食事、睡眠、休息で筋肉内のタンパク合成が促進され、筋グリコーゲン量が回復します。しかし回復が不十分になるとオーバーリーチングという疲労の蓄積に陥り、トレーニング効果を低下させます」(後藤教授=以下同)

■休息日は必要か?

 スペインの研究では若年男性を対象に自転車を全力でこぐトレーニングを行った。

 一方の群は「2週間連続で行う」、もう一方の群は「2日おきに6週間行う」。

 どちらもトレーニング回数は14回だったが、2週間連続の群はトレーニング効果が見られなかったのに対し、休む日を入れて6週間トレーニングした群では、最高パワー、平均パワーともに向上した。

「トレーニングは筋繊維の損傷、筋肉での炎症反応、酸化ストレスの発生、筋肉痛を起こす。炎症反応で筋肉に水がたまると、疲労が取れない。2~3日で元に戻りますが、抗酸化機能や免疫機能が低下していると回復が遅延し、トレーニングをしているのに十分な効果が得られない『筋トレロス』に至る。トレーニングで望ましい効果を得るには、科学的な根拠に基づいた正しいトレーニングに加え、栄養摂取が重要になります」

■栄養を取るベストなタイミングは?

 トレーニング後の適切な栄養摂取を客観的に示した研究がある。

 デンマークで平均74歳の高齢者に週3回、12週間の筋トレを実施。毎回タンパク質10グラム、炭水化物7グラム、脂肪3グラムの栄養補助食品を取ってもらったが、摂取時間を一つの群はトレーニング直後、もう一つの群はトレーニング2時間後とした。

 すると最大筋力においては、直後群も2時間後群も増加していたが、増加率は直後群の方が上回った。

 一方、筋肉の断面積については、直後群は7%増加したのに対し、2時間後群は0・2%しか増加していなかった。つまり、同じ栄養素でも、いつ取るかで大きな違いがあるということ。

 では、どのタイミングが理想的か? トレーニングで筋繊維の損傷や炎症、酸化ストレスの発生が起こることはすでに触れた。この段階でタンパク質を摂取すると血中アミノ酸濃度が上昇し、アミノ酸が筋肉に運ばれ、タンパク合成が促進。これを繰り返すことで筋肉量が最終的に増える。

「タンパク質に加えて抗酸化成分をトレーニング直後に取ると、アミノ酸濃度上昇から筋肉量増加までの一連の流れが効率良く進み、トレーニングによる酸化ストレスの発生を軽減することが研究結果で出ています」

 タンパク質が多い食品は鶏胸肉や豆腐、チーズなど。代表的な抗酸化成分はビタミンA・C・Eで、野菜や柑橘類などに豊富。また、市販のプロテインを利用すると効率良く必要量が取れる。

「摂取はトレーニング後30分以内。プロテインの場合、1回当たり15~20グラム程度が最も推奨されている量です。多量に摂取しても筋肉に取り込められる量には限りがあり、残りは尿に排出されてしまいます」

 筋肉は肥満を予防し、生活習慣病対策に不可欠。高齢者においては、生命予後に関わるフレイル、サルコペニア対策にもなる。適度なトレーニングと正しい栄養補給を始めようではないか。

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