Dr.中川 がんサバイバーの知恵

堀ちえみさんは脳ドックで転移チェック MRIなら微小病変も見つかる

堀ちえみさん(C)日刊ゲンダイ

 脳転移のチェックに役立つのは、MRIです。CTでは見つからないような小さな病変も発見できます。診断精度の向上に加え、治療法の進歩も重なり、脳転移があっても長期の生存が可能になりましたから、堀さんの行動はとても意味があることです。

 原発性の脳腫瘍は、周りの正常組織に染み込むように広がりますが、ほかのがん(多くは肺がんや乳がん)からの転移による脳腫瘍は正常組織との間にハッキリとした境界ができるのが一般的。境界が明瞭なことで、原発性より転移性の方が治療しやすいのです。

 そこに、放射線と分子標的薬の進歩が加わります。定位放射線治療とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を組み合わせることで、正常組織にほとんどダメージを与えることなく脳転移を叩くことができるのです。

 定位放射線治療とは、いわゆるピンポイント照射のこと。これができる前は脳全体を照射していて、正常組織へのダメージが免れず、照射後3カ月ほどで表れる認知機能の低下が問題で、延命効果はせいぜい半年ほど。それが今は、脳の機能を守りながら5年以上、生存する方が珍しくないのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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