新型コロナでわかった不都合な真実

流行期過ぎたインフル以外も…5、6月も死亡数の減少は続いている

閑散とした渋谷スクランブル交差点(5月)/
閑散とした渋谷スクランブル交差点(5月)/(C)日刊ゲンダイ

 人口動態調査には、今年の5、6月分の速報数が載っている。死亡数だけの簡単なものだが、それでも参考になる。1月からの累積死亡数は、次のようになっている。

●2020年(1~6月) 69万958人
●2019年(1~6月) 70万7211人

 差は1万6253人。

 1~4月の減少数が1万444人だったので、同じペースで減少が続いているとすると、6月末までに、その1・5倍の1万5666人が減少する、という計算になる。しかし実際には、それより600人近く余計に減っている。もちろん、5、6月の数字は速報値なので、あとで少し修正されるかもしれない。しかし1~4月の死亡数減少の勢いが、5、6月も維持され、しかも若干強まっているらしい、という点は変わらないだろう。

 だがそのことが、さらに問題を複雑にしている。というのも例年5、6月はインフルエンザのシーズンが終わっており、患者も死者もほとんどいないからだ。2019年5、6月における死者は、わずか63人だった。当然、インフルエンザに起因する肺炎で亡くなる人も限られてくる。つまり5、6月期における呼吸器系の死亡数は「減りしろ」がほとんど残っていないのである。それでも、全死亡数の減少が同じペースかそれ以上で進んでいる。ということは、つまり呼吸器系以外で亡くなった人が、もっと減っていなければならないのである。

 可能性のひとつは交通事故死だ。在宅勤務や外出自粛で交通量が著しく減ったのは、記憶に新しい。だが今年の4月までの数字では、昨年同期と比べて54人減にとどまっている。それに、2019年上半期の死亡は1930人だった。仮に5、6月期に大きく減ったとしても、まったく足りないのである。

 となると、もっとメジャーな死因から減っていると考えるのが自然だろう。やはり循環器疾患とがんということになるだろうか。2019年上半期の死亡数は、循環器疾患が18万2470人、がんが18万4881人だった。4月までに循環器系の死者が大きく減っていることは、すでに取り上げた。5、6月期にさらに減少幅が増したのかもしれない。だが、がんの死亡数が減るようなことがあるだろうか。あるいは、もっと意外な死因が減ったのかもしれない。抗がん剤治療などの自粛から、逆にがん患者の死亡が減った可能性も考えられる。あるいはそうした推測を覆すような、意外な死因が減ったかもしれない。

 しかし死因に関する統計は、5カ月の遅れで公開される。残念ながら、真相は来月、再来月まで待たないと分からないということだ。新しい数字の公開を待って、また本紙上をお借りしてその後の動向を紹介していきたい。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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