新型コロナ対策 手の洗いすぎはブロック機能を低下させる

日常生活ではせっけんと流水でOK
日常生活ではせっけんと流水でOK(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスをもらっても感染する前、あるいは感染しても症状が出る前に治るケースがある。こうした不顕性感染、無症状感染者と呼ばれる人たちは、「自然免疫」が働いていると考えられる。では、自然免疫をしっかり機能させるにはどうすればいいのか。アメリカ国立衛生研究所(NIH)でウイルス学・ワクチン学の研究に携わり、著書に「感染を恐れない暮らし方」がある本間真二郎医師(七合診療所所長)に聞いた。

 病原菌や異常な細胞といった「異物」を認識し、それらを排除して自身の体を守る防御機構が「免疫」だ。免疫は大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2系統に分かれ、さらに2種類ずつが存在する。自然免疫には、①「免疫細胞が関わらない構造的なもの」と、②「免疫細胞によるもの」があり、獲得免疫には、③「液性免疫」(抗体が関与)と、④「細胞性免疫」(細胞傷害性T細胞が関与)という種類がある。

 自然免疫はウイルスや細菌といった病原体に対する第1の防御壁で、①によって病原体の侵入をブロックしたり、侵入されても②の免疫細胞が病原体を食べて排除する。

「自然免疫が突破されると、次により強力な獲得免疫が作動しますが、自然免疫がしっかり機能していれば、獲得免疫の出番は必要ないか、少ないまま感染や発症を防ぐことができます。新型コロナウイルスで重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患がある人は、まずは自然免疫が衰えている場合が多い。ですから、普段から自然免疫の力を高めておくことが大切なのです」

■皮脂や皮膚の常在菌まで排除してしまう

 自然免疫のうち、免疫細胞が関わらない①は、皮膚、唾液、胃液、粘液、粘膜、繊毛運動、常在菌などが該当する。免疫細胞が関係しないため軽視されがちだが、立派な自然免疫系の一つで、まずは①を整えてウイルスの侵入を防ぐことが重要だという。

「皮膚は、傷がなければほとんどすべての病原体の侵入を完璧に防ぎます。病原体の感染のほとんどが皮膚ではなく気道、目、生殖器などの粘膜を介して起こるのもそのためです。正常な皮膚には、表皮ブドウ球菌やアクネ菌といった常在菌が多く存在し、皮脂や老廃物を食べて脂肪酸を分泌し、皮膚を弱酸性に保って病原体から守っています。しかし、そうした常在菌を過剰に排除すると、皮膚のバリアー機能が低下して感染しやすくなってしまうのです。手洗いや手指の消毒は、接触感染を防ぐために有効ですが、殺菌力の強いせっけんを使った手洗いやアルコール消毒を頻繁にやり過ぎると、皮脂や皮膚の常在菌まで排除してしまったり、手荒れを招くため逆効果になってしまいます」

 手洗いは、特に感染症の流行期ではない日常生活では普通のせっけんと流水でOK。外出先から自宅や会社に戻った時、調理や食事の前、トイレの後に行うだけで十分なのだ。

「唾液や粘膜を覆う粘液はウイルスを洗い流したり、さまざまな抗菌・抗ウイルス物質を含んでいて、病原体が細胞にたどりつく前に不活化します。また、気道細胞表面に存在する繊毛はブラシのような形をしていて、規則正しく運動することでワイパーのように病原体を排除します。この働きにより、強力な酸である胃液を出す胃に異物を送り、ウイルスを不活化します。しかし、殺菌力の高いポビドンヨード入りのうがい薬を使って頻繁にうがいをしていると、口腔内の常在菌を減らしたり、粘膜にもダメージを与えてしまいます。むしろ結果的にウイルスに感染しやすい状態を作り出してしまうのです」

 うがいには、喉に潤いを与えることで、粘膜の働きが弱まるのを防いだり、繊毛運動を正しく保つ効果がある。それには基本的に水だけで十分な効果が期待できる。

 自然免疫もそうだが、とりわけ獲得免疫には「腸内細菌」が大きく関わっていて、新型コロナウイルスの感染対策は、「腸内細菌を元気にする生活に集約される」という。次週、解説してもらう。

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