がんと向き合い生きていく

相談センターで「不安になるのは無理もない」と言われ…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■娘には言えないことも話せる気がする

 先日、娘がクルマを出して、病院の定期診察に連れていってくれました。担当医からは「この前と状態は変わらないようです」と言われました。 診察の後、予約してあった「がん相談支援センター」に初めて寄ってみました。相談員の方は40代くらいの女性で、臨床心理士さんでした。

「先生から今度は抗がん剤が効く可能性が低いと言われたことで、とても不安です」

 そうお話しして、続けました。

「体の調子が悪いと、悪いことばかり考えます。コロナの影響で、この半年は娘の出勤が減って自宅で仕事をしていることが多いので、会社が潰れたのか……解雇されたのか……などと心配になります。私は時々、何のために生きているのか分からなくなるのです。それでも、それなりにしっかりした娘を残せたので、私の人生はこれでいいかとも思っています」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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