免疫の正しい知識<下>免疫力を高めるには腸内細菌を整える

免疫力を高めるには「腸内環境」が重要
免疫力を高めるには「腸内環境」が重要

 新型コロナウイルスの感染や発症を防ぐための最大の対策は、普段から免疫力を高めておくことにある。それには「腸内細菌」が重要だという。アメリカ国立衛生研究所(NIH)でウイルス学・ワクチン学の研究に携わり、著書に「感染を恐れない暮らし方」がある本間真二郎医師(七合診療所所長)に聞いた。

 ウイルスや細菌などの病原体を排除して自身を守る「免疫」は大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2系統に分かれている。さらに、自然免疫には、①「免疫細胞が関わらない構造的なもの」と②「免疫細胞によるもの」があり、獲得免疫も、③「液性免疫」(抗体が関与)と④「細胞性免疫」(細胞傷害性T細胞が関与)が存在する。

「自然免疫系は、病原体の侵入を防いだり、入ってきてもすぐに排除を始め、それでも対処できないと、より強力な獲得免疫系にバトンタッチして病原体を排除します。自然免疫系が処理した病原体は獲得免疫系に伝えられるように、4種類の免疫が協調してきちんと機能することが、感染を防いだり、感染しても無症状あるいは軽症のまま回復することにつながります」

 自然免疫系と獲得免疫系の両方の働きを高め、とりわけ獲得免疫系を調節して暴走を防ぐために大きく関わっているのが「腸内細菌」だ。

 われわれの体内には1000種類以上、100兆個以上の腸内細菌がいるといわれ、これら全体を腸内細菌叢と呼んでいる。ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」、大腸菌などの「悪玉菌」、どちらにも属さない「日和見菌」の3つのグループがあり、まずはその種類が多いほど良い状態とされる。さらに、日和見菌は善玉菌が優位になると善玉のように働き、悪玉菌が増えると悪玉のように働く。

「腸内細菌のバランスは『善玉:日和見:悪玉』の比率が『2~3:6~7:1』になっている状態が良いとされ、バランスが良好な腸内細菌は健康の根本を支えるさまざまな役割を果たしています。その中に、病原体の侵入を防いだり、免疫を活性化させて感染を防ぐ働き、逆に行き過ぎた免疫を抑え、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を防ぐ働きがあるのです」

 われわれの「腸」には、体内では最も多くの免疫細胞が集まっている。腸内に病原体が入ってくると、小腸の下部にあるパイエル板という免疫組織にあるM細胞が病原体を取り込み、次にその直下にある樹状細胞が病原体を分解してヘルパーT細胞に伝える。ヘルパーT細胞が病原体と判断した場合は活性化して、B細胞に抗体を作るように指令を出す。B細胞によって産生された抗体は、体内や腸管の粘液に分泌され、感染や発症を抑える働きをする。

 腸内細菌はこうした免疫細胞と深く関わっていて、免疫を活性化したり、逆に免疫を抑制する免疫細胞を増やしたりすることで、免疫機能のバランスを整えていることが分かっている。つまり、腸内細菌の種類を増やし、腸内細菌叢のバランスを良好にすれば、免疫力を高めることができるのだ。

■「不自然なもの」を取らないようにする

「腸内細菌を整えるために大切なのが『自然に沿った暮らし』です。といっても、大自然に囲まれて生活しなければいけないわけではありません。また、ヨーグルトを食べたりサプリメントを飲むといったことでもありません。むしろ『不自然なものを取らないようにする』のです」

 本間氏は、腸内細菌を整えるためには以下を心がけるのが効果的だという。

◆水分をよく取る(食事以外のときに)
◆よい塩(ミネラルが多い天日海塩)を取る
◆唾液をたくさん出すようにする
◆食べすぎない
◆地産地消で旬のものを取る
◆精製食品、加工食品を取らない
◆食物繊維を取る
◆発酵食品を取る
◆よく噛む


「そのうえで、砂糖、牛乳、小麦、油もの全般、食品添加物、化学調味料、遺伝子組み換え食品、加工食品といったものはできるだけ摂取を控えるように心がけましょう。すべてを実践するのは難しいと思いますから、自分が今できる範囲内で積み重ねていく。その積み重ねが大事なのです」

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