コロナ禍中のインフルエンザ…発熱したら自宅療養でもOKか

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 例年、インフルエンザのワクチン接種をしていない人も、今年は考えを変えた方がいいかもしれない。その理由は、言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大と重なる可能性があることだ。

 コロナの初期症状は多くの症例で、発熱、呼吸器症状、頭痛、倦怠感がみられており、それ以外では味覚障害や嗅覚障害、下痢・嘔吐などの消化器症状がある。一方、インフルエンザは突然の高熱、呼吸器症状、倦怠感、食欲不振など。頭痛や関節痛、筋肉痛もみられる。

 九段下駅前ココクリニック(東京都)の石井聡院長が言う。

「コロナには味覚障害や嗅覚障害、インフルエンザには突然の高熱といった特徴があるとはいえ、一般の人ではコロナかインフルエンザか見分けがつきません。私たち医療従事者も、インフルエンザは非常に数多く診てきていますが、それに比べるとコロナは圧倒的に少ない。コロナかインフルエンザかは、検査をしないと鑑別できません。身近にコロナ感染者がいるという、コロナ感染が疑われる場合でも、症状だけではコロナかインフルエンザか、その両方かは分からないのです」

 今年のインフルエンザシーズンで心配される状況が、コロナまたはインフルエンザが疑われる症状が出た場合、医療機関に直接行って、そのまま受け入れてもらえるのか、ということ。

 インフルエンザには、2000年の発売からインフルエンザ抗原迅速検査キットが臨床現場で使用されるようになっているが――。

「PCR検査や抗原検査を実施していない医療機関では、例年行ってきたインフルエンザの迅速検査を実施しないところが増えるかもしれません。すると、PCR検査などもできる医療機関は発熱外来を設置している一部の大病院や、それに準ずる機能を都道府県に認定された一部の病院・クリニックなどになりますから、そこにコロナかインフルエンザかどちらか分からない患者さんが殺到する可能性が危惧されます」

 PCR検査などを実施している医療機関でも、これまでと同じようにはいかない。

 石井院長の九段下駅前ココクリニックでは、行政検査としてPCR検査の受託を行っており、抗原検査、抗体検査も行っている。

「インフルエンザシーズンの対応に関しては今詰めているところですが、発熱者とほかの一般患者さんが併存しないように空間的・時間的分離策を取らなければなりません。特に発熱の方が増えてくると、普段のようにスムーズに診療が進まないかもしれません。また、同じくPCR検査を行っている医療機関でも、施設面やスタッフの制約によって、クリニックごとにどういうフローで発熱の方を診ていくかは変わってくる。どの医療機関に行っても同じ対応とは限りません」

■まずはかかりつけ医に電話で相談を

 インフルエンザはコロナと違い治療薬があるが、自宅で安静にして治癒を待つ、という選択肢もある。

「医療機関の指示に従って受診か自宅療養かを決めるべきです。かかりつけ医がいれば、まずは電話で指示を仰ぐといいでしょう。コロナであってもインフルエンザであっても重症化しなければ、自宅療養は可能です。ただし、いずれも自己隔離は必要です。なお、医療機関側も努力しており、先月時点では外来患者間でクラスターが発生したという報告はほぼありません」

 いずれにしろ、今年は例年とは状況が違う。

 そもそもインフルエンザワクチンは、インフルエンザを予防するか、発症しても重症化させないために多くの医療従事者から強く推奨されている。それらの言葉に耳を傾けてこなかった人も、改めて考え直した方がいい。

 インフルエンザワクチン接種は、一般的には今月末から始まる。

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