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認知症予防に効果的な生活スタイルとは…国内で論文発表

趣味を楽しむ
趣味を楽しむ

 高齢化に伴って、認知症を患う人の数は増加しています。しかし、現代の医療では症状を緩和したり病状の進行を遅らせる治療しかできず、認知機能を改善させるような治療法は確立されていません。そのため、認知症の予防に対する関心は日増しに高まっているといえるでしょう。

 そんな中、日常における活動スタイルと、認知機能(記憶や見当識)との関連を検討した研究論文が、日本疫学会誌に2020年9月19日付で掲載されました。

 この研究では、65歳以上の日本人4万4985人(男性2万772人)が対象となっています。被験者に対して、知的活動(書籍、雑誌、新聞)、創造的活動(工芸品、絵画)、文化的活動(俳句、書道、茶道、華道)に関するアンケート調査を行い、認知機能障害との関連性が検討されました。なお、結果に影響を与えうる年齢、教育水準、喫煙・飲酒状況などの因子について、統計的に補正して解析されています。

 6年にわたる追跡調査の結果、認知機能障害のリスクは、知的活動をしていなかった人に比べて、していた人で25%、統計的にも有意に低下しました。また、創造的活動をしていた人でも工芸品で29%、絵画で20%、統計的にも有意に認知機能障害のリスクが低下しました。他方で、文化的活動は認知機能障害との関連性を認めませんでした。

 知的、創造的な活動ができるような人は、そもそも健康状態が良好で、認知機能の低下をきたしにくい人だったのかもしれません。したがって、これらの活動スタイルが直接的に認知機能障害を予防しているとはいえないように思います。とはいえ、このような趣味を楽しむことは、少なからず生活に豊かさをもたらし、生き甲斐にもつながることでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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