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5つのサイトカインを発見 血液検査で重症化リスクがわかる

コロナウイルス検査
コロナウイルス検査(C)ロイター

 新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の主な死因は重症肺炎だが、その原因となるのが過剰な免疫反応で生じる「サイトカインストーム」だ。これは感染症などにより、血液中のサイトカイン(主に免疫細胞から分泌されるタンパク質で細胞間の情報伝達などの役割を持つ)が異常に増えて、その作用が全身に及んだ結果、血管の拡張によるショック状態、播種性血管内凝固症候群(DIC)などによる血栓形成や多臓器不全などが起こることを言う。サイトカインの中でも有名なのが「インターロイキン6(IL―6)」で、炎症を伴うさまざまな疾患で高値を示す。他にも重症化に関係するサイトカインがあって、男性は炎症を起こす「IL―8」や「IL―18」などのサイトカインの量が血液中に多く、女性と比べて感染初期の免疫反応に違いがあることがわかっている。

 ごく最近、国立国際医療研究センターは新型コロナウイルス感染症で重症・重篤化した患者の血液から採取したサイトカインに共通する5つを発見。その研究結果が「Gene」誌オンライン版に掲載された。

 研究の対象となったのは軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の患者28人。血液中に流れる抗体の濃度が時間経過と共にどう変化するかを調べた。一方、58人には感染早期に「CCL17」を測定した。

■感染初期から予測可能

 一連の研究の結果、軽症回復者と重症化患者を分けることが可能な因子として、「CCL17」「IFN―λ3」「CXCL9」「IP―10」「IL―6」が同定されたという。

 とくに重症者のCCL17は、感染初期から数値が基準値よりも低く、その後、重症化するまで低い値が続いたという。一方で、軽症者では健常者とほぼ同じ値だった。残りの4因子は、感染初期では重症者、軽症者にかかわらず違いはなく、重症患者では、重症化する数日前から急激に血中濃度が上昇し、5倍以上に達することがわかった。

 とはいえ、この5つの因子が他の病気でも新型コロナウイルス感染したときと同じような数値の動きをする場合は、新型コロナウイルス感染症の将来の重症度を測るマーカーにはなりえない。はたして、この5つの動きは新型コロナウイルス感染症の重症化に特異的なのだろうか?

 それを調べるため、研究チームは他の疾患群(C型慢性肝炎、児童精神疾患、2型糖尿病、慢性腎不全、慢性心不全、間質性肺炎、関節リウマチ)からの採血で確認したところ、CCL17が低い値を取るのは、新型コロナウイルス感染症の重症者のみだったという。

 残り4つについても、一部の病気に反応することはあったものの、新型コロナウイルス感染症の重症者で特徴的に高い値を示したという。

 これらの結果からも、5つの因子が新型コロナウイルス感染症の重症化患者を早期発見および囲い込みに有用である可能性が示され、CCL17の低下は感染早期に重症化予測に有用であると示唆された。

 同センターでは今後、国内において多施設共同による前向き試験を実施し、実臨床での有効性についてさらに検証を進めていく予定だという。本格的な臨床研究の報告が待たれる。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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