モノが突然見えづらくて…高血圧なら目の動脈硬化に要注意

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 20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧、といわれるほど、高血圧は非常に多い病気だ。高血圧は動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞などの危険因子になる。そして高血圧は、50歳以上に多い目の病気、「網膜静脈閉塞症」の危険因子でもある。「ひきち眼科」(北海道・札幌)の引地泰一院長に聞いた。

「網膜静脈閉塞症は、網膜を流れる血管の静脈が詰まる病気です」

 症状は、「ぼやける」「輪郭がよく分からない」「視野の一部分が暗くなって見えない」など。これらの見え方の異常が、突然起こる。

「『年のせい』『疲れているから』などと考え、様子見をする方がいます。しかし、遅くとも1~2週間以内には眼科を受診すべきです」

 静脈が詰まると血液の行く手が塞がれ、血液があふれ出る。そして網膜内に広がり、網膜浮腫(腫れ)を起こす。

「網膜浮腫は、静脈が詰まって1~2週間ほどで出現します。詰まった静脈が網膜のどの部位にあるかで症状やその後の視力の回復が異なってくるものの、網膜浮腫が長く続くと、治療をしても視力が十分に回復しない可能性が高くなるのです」

 治療のポイントは、主に2つある。1つは、網膜浮腫、特に網膜の中央にある「黄斑部」の浮腫(黄斑浮腫)の持続を極力短くすることだ。黄斑部は「見え方」に最も関わりが強く、浮腫の持続の抑制が、視力の回復度合いを向上させる。

「黄斑浮腫へは、抗VEGF薬という浮腫を改善する薬を眼球に注射します。大半は2~3カ月で再発するので、1~2年間、定期的に注射が必要になります」

 眼球に注射、といっても痛みはなく、負担が少ない治療だ。

 網膜静脈閉塞症では、広い範囲の網膜で血流障害が起こると網膜が酸素不足となり、網膜の表面に新しい血管(新生血管)が発生することがある。新生血管は細くてもろいので出血しやすく、眼球内に大量に出血すると著しい視力低下を招く。そこで新生血管の抑制が、網膜静脈閉塞症の治療のもう1つのポイントになる。

「抗VEGF薬にも新生血管を抑制する作用がありますが、さらにレーザー光で網膜を凝固させる光凝固という治療も行います。光凝固には新生血管の発生を予防するとともに、すでにできた新生血管の活動性を低下させる効果もあります」

 網膜静脈閉塞症で私たちがしっかり認識しておきたいのは、まず、「見え方の異常」を感じたら速やかに眼科を受診すること。次に、網膜静脈閉塞症は高血圧などを起因とする目の動脈硬化が進行して起こる病気であり、全身の動脈硬化も進行していると考えられることだ。

「つまり、脳卒中、心筋梗塞のリスクも高い。全身の状態も病院でしっかり調べるよう、網膜静脈閉塞症を起こした患者さんには伝えます」

 言い換えれば、動脈硬化の予防が、網膜静脈閉塞症、脳卒中、心筋梗塞すべての予防になる。

■チョコレートのカカオポリフェノールが目や心臓の病気を予防

 米眼科学会のホームページでは目に良い食品が紹介されており、「体に良い食事は目にも良いし、おいしい食品もたくさんある。紹介する食品を積極的に摂取することで、目の病気の予防だけでなく、心臓病など全身の病気の予防につながる」とされている。

 この中で紹介されている食品のひとつがチョコレート。豊富に含まれるカカオポリフェノールには、血管を拡張させて血圧を下げたり、血管が詰まりやすいドロドロな血液をサラサラな血液に改善する効果がある。また動脈硬化の誘因となる悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐことも知られている。

 チョコレートには心臓や血管を保護する作用の栄養素が含まれており、脳心血管疾患の予防効果が報告されている。「高カカオチョコレート」と書かれているものを選ぶと、カカオポリフェノールの含有率が高くなる。

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