がんと向き合い生きていく

とどめ刺す「セカンドオピニオン」はより苦しみを与えるのでは

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 53歳のKさん(男性)は「セカンドオピニオン」として、診療情報提供書を持参して来院されました。初めてお会いしたのですが、痩せていて元気がなさそうに見えます。

 紹介状には次のように書かれていました。

「膵臓がんで化学療法、放射線治療も行いました。がんは膵尾部なので閉塞性黄疸にはなっていませんが、腹水が出てきており、がん性腹膜炎となっている可能性が高いと考えられます。今後、積極的な治療は無理と考えています。これまでの治療経過・検査所見を別紙に記載します。ご本人は他に治療法がないかセカンドオピニオンを希望されました。なにとぞよろしくお願いいたします」

 紹介状に一通り目を通してから、顔を上げると、Kさんはジッと私を見つめていました。

「先生、やはり私は手術も薬の治療も無理なのでしょうか?」

 Kさんからの質問に、私もKさんの目をジッと見つめながら、「ごめんなさい。正直、これまでの経過から、がんに対しての治療は難しい、無理だと思います」と答えました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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