上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

先進的な医療には「ヒト・モノ・カネ」が余計に必要になる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 TAVIのような先進的な医療が実現するまでには、「ヒト・モノ・カネ」が揃って大きく動いています。まずは先進的な技術の開発が必要で、そのためには莫大な開発費がかかります。また、そうした先進的な医療を行うためには、特別な医療機器を揃えなければなりません。さらに、実際の現場で安全性や効果を検証する臨床試験が必要で、この費用も相当かかります。

 そのうえ従来とは異なる技術を要する新しい特殊な治療法なので、それをきちんと実行できる医師を育てるための訓練が必要です。しかも、そうした先進的な治療法をいったん行えるようになったとしても、それを改良したものが登場すると、また同じように「ヒト・モノ・カネ」が少しずつ必要になります。

■スマートに進化して患者の身体的な負担は減ったが…

 先進的な医療のほとんどは、従来の大掛かりな治療法に比べて、低侵襲でスマートに進化したものといえます。スマートになって患者さんの負担が少なくなった分、病気が再発したときに再治療ができる可能性が高くなります。ただ、再治療ということは、1度目と同じかそれ以上の医療費がかかりますし、治療のハードルが高くなるため実施する側にはエキスパートな対応が求められます。より確実性が高い先進的な医療技術、医療設備、医療器具などが必要で、そうした経費もゼロというわけではありません。つまり、先進的な医療は「ヒト・モノ・カネ」の資源が余計にかかる医療ともいえるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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