コロナ禍でさらに危ない 「秋バテ」撃退する2つのポイント

コロナ禍中にある今秋はより注意が必要
コロナ禍中にある今秋はより注意が必要(C)日刊ゲンダイ

 過酷な暑さもすっかり和らいで過ごしやすい季節になったのに、体調不良やヤル気が出ないなどの症状が表れるのが「秋バテ」だ。いまだコロナ禍中にある今秋は、より注意が必要だという。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に詳しく聞いた。

 秋バテは、疲労感、だるさ、頭痛、めまい、便秘、下痢、不眠、食欲不振、ヤル気の低下……といった症状が表れる。原因は自律神経に大きな負担がかかって乱れてしまうからだ。自律神経は、呼吸、心拍数、消化吸収、血圧、体温、睡眠、摂食など、われわれのあらゆる身体活動をコントロールしている重要な神経で、臓器、血管、皮膚、汗腺といったほとんどすべての器官に関与している。自律神経に大きな負担がかかって正しく機能できなくなると、全身に不調を来してしまうのだ。

 秋バテで、自律神経に負担をかける主な原因は「気候の変化」と「日照時間の短縮」だという。

「猛暑だった夏から肌寒い秋になると、体温を一定に保つために働いている自律神経はフル回転を強いられます。また、昼間は暖かいのに夜になると急に冷え込むといったように、秋は一日の中でも気温や気圧の急激な変化があるので、自律神経にはさらに大きな負担がかかるのです」

 気候の変化の影響を小さくするには、カーディガンや薄手のジャケットといった上着を持ち歩き、気温や室温の変化に合わせてこまめに着脱するなどの対応を心がけるのがおすすめだ。

■セロトニンが大切

 さらに今年の秋バテは、日照時間の短縮がより深刻な問題を引き起こしかねないという。

 われわれは日光を浴びることで神経伝達物質の「セロトニン」を生成している。セロトニンは、気分を明るくしたり、ヤル気を高めるなどの作用があるうえ、夜になるとセロトニンをもとに睡眠ホルモンの「メラトニン」が作られる。秋になって日照時間が短くなると、セロトニン分泌の調整が乱れて量が減ってしまい、気分が落ち込んだり、眠れなくなるといった症状が表れる。いわゆる「季節性うつ」と呼ばれる状態だ。

 このセロトニンが秋バテにも大きく関係している。

「セロトニンには自律神経の働きを安定させるという役割もあります。日照時間が短くなる秋になって日光を浴びる時間が少なくなるとセロトニンの分泌が減り、自律神経が乱れてしまうのです。オーストラリアの研究では、日照時間が少なくなるとセロトニンの利用率が低下するという報告があります。また、昼間に日光を浴び続けると、セロトニンの利用率がアップすることもわかっています。これは一日の中でも同様で、たとえば雨が降って日光を浴びる時間が減ると、セロトニンの利用率が下がります。セロトニンがきちんと利用できなくなれば、自律神経に負担がかかり、秋バテを招くのです」

 コロナ禍が続く今年の秋は、いまだテレワークの人がたくさんいるし、外出を控えている人も多い。季節的な要因だけでなく、日常生活で日光に当たる時間がさらに減っているため、より秋バテに悩まされる条件が揃っているのだ。

 セロトニンをしっかり分泌させ、自律神経を整えるためには、まずは朝に軽く散歩をするなど外に出て、分泌のスイッチを入れる。テレワーク中でも、昼間はなるべく日の光が当たる場所で活動することを意識する。

「さらに、ダイエットなどの健康目的でプロテインを摂取している人は注意が必要です。プロテインには『BCAA』と呼ばれる必須アミノ酸が多く含まれているタイプがあります。BCAAは運動時に筋肉のエネルギー源になるバリン、ロイシン、イソロイシンという3種類のアミノ酸の総称で、これらを過剰に摂取すると、セロトニンの材料になる『トリプトファン』というアミノ酸が減ってしまうのです。研究では、BCAAを4グラム摂取すると、トリプトファンの血中濃度が10分の1まで減少することが明らかになっています」

 トリプトファンは、大豆などの豆類に多く含まれている。味噌汁、納豆、豆腐などの食品から十分な量を摂取できるので、セロトニンに変化する前の朝にしっかり取っておきたい。

 気候の変化への対応に加え、日照時間とセロトニンを意識することが秋バテの撃退につながる。

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