がんと向き合い生きていく

便の検査で血が混じったら「どこからの出血なのか」が問題

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 亡き父には謝りたいことはたくさんあるのですが、この一件でもいまだに「ごめんなさい」という気持ちです。

 同じく小学校低学年の頃の、ゾクッとする忘れられない思い出があります。教室での私の席は左側が窓に接していて、前から7番目でした。私のすぐ右側の列で1つ前の席には、可愛い女の子が座っていました。私が正面に立つ先生の姿を見るには、いつもその女の子の後ろ姿が視野に入ります。

 ある日の授業中、私はその子の後ろ姿を見て、「わ!」と大きな声をあげてしまいました。椅子に座った彼女の短いスカートの裾から素足にかけて、長い紐がゆらゆら動いているのが見えたのです。寄生虫のサナダムシだと思います。

 すぐに先生が彼女のところに来て、手にした紙でその虫をつかんで引っぱったと思ったら、「あ、切れた」と言いました。“紐”の長さは20センチくらいはあったと思います。一瞬、教室は大騒ぎとなり、彼女は泣き出し、保健室に連れて行かれました。先生は「静かに!」と騒ぎを収め、授業が続けられます。彼女は、授業の合間の休み時間になって、何事もなかったように戻ってきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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