がんと向き合い生きていく

便の検査で血が混じったら「どこからの出血なのか」が問題

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 もちろん、潜血が陽性でもがんとは限りません。大腸ポリープ、大腸憩室出血、潰瘍性大腸炎などの場合もあります。逆に、便潜血反応が陰性でも大腸がんが潜んでいることがあり、まったく安心というわけではありません。大腸の内視鏡検査では、大腸に便がない状態にしなければなりません。そのため、2日ほど前から下剤などの前処置が必要です。

 昔の便潜血反応では、食べた肉などに含まれる動物の血液が便に混じると、陽性になっていました。しかし、弘前大学(当時)の斎藤博先生(青森県立中央病院消化器内科医療顧問)が、自分の体から血が出ている場合にのみ陽性となる「免疫学的便潜血反応」を世界で初めて開発し、これが現在の検査法になっています。

 近年、日本では胃がんは減っていますが、大腸がんは増えています。早期に見つけるためにも、まずは便潜血反応の検査が大切です。

4 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事